Geminiで介護記録作成を支援。最大2割の作業短縮で現場の余白を生む方法
コラム更新日:2026.10.06
Googleの生成AI「Gemini」に搭載された機能「ケア記録アシスト」は、介護現場における日々の記録業務を劇的に効率化するツールとして注目を集めています。
毎日の食事・排泄・バイタルや経過観察など、「介護記録」にかかる作業負担はスタッフの大きな課題であり、本来のケアに充てる時間を圧迫しがちです。
本記事では、音声や短いメモから専門的な文章を下書き作成できる「ケア記録アシスト」の仕組みや具体的なメリット、法人が安心して利用するためのセキュリティ対策まで解説します。
執筆・監修:TSクラウド編集部
Google Cloud の「プレミア認定」を保有する、Google Workspace 正規販売代理店です。業界歴 17 年、延べ 3,500 社以上の導入支援実績( 2026 年 2 月時点)に基づき、Google Workspace の最新機能から活用術、DX推進に役立つノウハウを専門的な視点で解説しています。
※情報は記事公開(更新)時のものです。Google Workspace の仕様や価格は変更される場合があるため、最新情報は必ず公式ページでご確認ください。
※名称変更に関するお知らせ: NotebookLMは、2026年7月に「Gemini Notebook」に名称が変わりました。メディア内では旧名称が利用されていることがあります。その場合は、Gemini Notebookに読み替えてご確認ください。
目次
Google「Gemini」の「ケア記録アシスト」とは?
まずは「ケア記録アシスト」の概要をご説明します。
Gemの公式テンプレートにある「介護記録の作成支援ツール」

「ケア記録アシスト」は、Googleが提供する生成AI・Geminiのカスタム機能「Gem」として提供されている介護記録の下書き作成支援ツールです。Gemとは、特定の目的に合わせてAIに役割や指示(プロンプト)をあらかじめ設定しておける機能です。
ケア記録アシストを活用すれば、スタッフが現場で吹き込んだ音声や、紙の連絡帳を撮影した写真から、要点を押さえた自然な介護記録の下書きが瞬時に作成されます。
ケア記録アシストを利用するには
ケア記録アシストを利用するには、法人向け「Google Workspace」の契約が必要です。介護現場で扱うデータには個人情報や健康状態といった機微な情報が含まれますが、法人向け環境であれば、入力データが外部に共有されたり、AIの学習モデルに二次利用されたりすることはありません。
さらに、管理者が適切なアクセス権限を設定することで、セキュリティガイドラインに準拠した安全なAI運用が実現します。また、1ユーザーあたり月額数千円程度の低コストから導入でき、事業所の規模や予算に合わせたプラン選択が可能です。

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ケア記録アシストの機能と特長
ケア記録アシストには、日々の介護業務を効率化する先進的な機能が備わっています。
音声や手書きメモからの下書き自動作成
ケア記録アシストの大きな特長は、短時間で入力した粗いデータから本格的な介護記録の下書きを自動作成できる点です。

介護スタッフがスマホやタブレットに向かって話した「短い音声メモ」や、現場で箇条書きしたテキスト、さらには紙の連絡帳や手書きメモを撮影した「写真データ」をアップロードするだけで、AIが文脈を自動補完し、適切な介護記録の草案を数秒で作成します。
対応フォーマットも柔軟で、医療・看護連携でよく使われる「SOAP形式(主観・客観・評価・計画)」や、特定の出来事に焦点を当てる「F-DAR形式(焦点・データ・行動・反応)」などのフォーマットに瞬時に整形してくれます。
介護の専門試験で実証された高精度な自然言語処理能力
生成AIを現場で使う際、「専門用語や現場の文脈を正しく理解できるのか」という疑問を持つ方も多いでしょう。
ケア記録アシストの基盤には、高度な自然言語処理能力を持つAIモデル(Gemini 3.0 Flash等)が採用されており、介護現場特有の専門知識や文脈を深く理解する能力が実証されています。
具体的には、以下の国家試験問題等のベンチマークにおいて高い正答精度を記録しています。
- 第37回(令和6年度)介護福祉士国家試験:100%の正答精度
- 令和7年度(第28回)東京都介護支援専門員実務研修受講試験:99.7%の正答精度
※精度はいずれも5回の評価を行った平均値です。
介護福祉士試験で問われる実務的ケア知識から、ケアマネ試験で問われる介護保険制度・制度上の要件まで幅広くカバーしているため、「移乗」「嚥下」「ADL」「バイタル」といった専門用語や略語が含まれていても、文脈に沿った正確な介護表現へと変換することができます。
外国人スタッフの言葉の壁を解消する多言語入力サポート
日本の介護現場では、特定技能をはじめとする外国人介護人材の受け入れが急速に進んでいます。しかし、日本語での専門的な文章作成や漢字の書き分けは、外国人スタッフにとって非常に大きなハードルとなっていました。
ケア記録アシストは多言語入力に対応しており、たとえばインドネシア語などの母国語で音声入力した場合でも、自然な日本語の介護記録へ自動翻訳・変換することができます。
これにより、外国人スタッフ本人の文章作成ストレスや記録ミスへの不安が軽減されるだけでなく、日本人指導者が行っていた記録の修正・指導工数も大幅に削減されます。現場での心理的安全性が高まることで、外国人材の定着率向上や早期戦力化にも大きく寄与します。
介護現場でケア記録アシストを活用するメリット
ケア記録アシストを導入することで、現場の介護スタッフだけでなく事業所の経営やサービス品質全体にも多くのメリットがもたらされます。
記録作成にかかる時間の削減と余白の創出
ケア記録アシスト導入による最大のメリットは、記録業務に費やす時間の劇的な削減です。株式会社シーユーシー(CUC)が実施した先行実証実験データによると、介護記録の作成時間を約20%カットできることが実証されています。
現場スタッフの業務負担とストレス軽減
キーボード入力やパソコン操作が得意でないスタッフにとって、毎日の記録作成は精神的な負担となっていました。「音声入力×Gemini」によるシンプルな運用を取り入れることで、話すだけで下書きが完成するため、IT操作への抵抗感が強いスタッフでも無理なく運用可能です。
書類仕事に対する負担感が減ることで残業の削減につながり、職場環境の改善や離職率低下といった好循環をもたらします。
記録の表記揺れや誤字脱字の防止
手書きや手入力による介護記録では、記入者によって文体がばらついたり、主観的な感情表現が入ってしまったり、専門用語の表記揺れや誤字脱字が発生しやすいという課題がありました。
Geminiを活用して客観的かつ標準的な文章フォーマットへ整形することで、施設全体で記録の品質を一定に保つことができます。誰が読んでも状況が正確に伝わる記録が残るため、スタッフ間の申し送りや他職種連携の精度向上にもつながります。
既存の介護ソフトと併用できる柔軟性と低コスト運用
新たなシステムを導入する際、既存の介護ソフトや国保連請求システムとのバッティングが懸念されます。
しかし、ケア記録アシストは、あくまで「記録文章の下書きを作る」ことに特化したツールです。既存の介護ソフトを置き換える必要はなく、生成された文章をコピー&ペーストで既存システムへ転記する運用が可能です。高額な初期開発費用やシステム改修費をかけることなく、手軽かつ低コストに運用をスタートできます。
ケア記録アシストを使い始めるまでの5ステップ
事業所でケア記録アシストを導入・運用開始するまでの基本的な流れは以下の5ステップです。
- 契約・アカウント発行:法人向けGoogle Workspaceの契約を行い、スタッフ用アカウントを発行する
- Gemの初期設定・追加:Geminiアプリにアクセスし、Gem機能の一覧から公式テンプレート「ケア記録アシスト」を選択する(必要に応じて自施設ルールを追記)
- 現場への展開・研修:スタッフ向けに音声入力方法や操作手順、社内運用ルールをアナウンスする
- 入力・生成:現場で音声やメモ写真から記録の下書きを生成する。
- 既存ソフト連携・保存:生成された文章を確認・修正し、既存の介護システムに転記して正式記録として保存する。

ケア記録アシスト活用した介護記録の作成手順
Geminiを活用し、迅速かつ正確に記録を作成するための具体的なステップを解説します。
介護の記録をメモや音声で入力する
ケア記録アシストのGem画面を開いたら、音声またはテキストで情報を入力します。この段階で整った文章を作る必要はありません。箇条書きや単語の羅列、あるいはスマートフォンからの音声入力で十分です。

また、公式テンプレート(Gem)の右上メニュー(三点リーダー)から「コピーを作成する」を選択すると、既存のテンプレートをベースにして自施設の記録ルール(「バイタルは〇〇と表記する」「食事量・排泄項目を必ず含める」など)をプロンプトへ自由に追記・カスタマイズできます。


Gemの追加質問に対し、必要に応じて回答する
Gem側から「バイタル値に変化はありましたか?」「その後の様子はいかがですか?」といった確認や深掘りの質問が届いた場合、補足情報を短く返答します。特に補足が必要ない場合は、そのまま次のステップへ進んで問題ありません。
最終アウトプットの前に出力内容に誤りがないか確認する
AIが出力した草案を人間が最終確認・承認する運用プロセスを「Human-in-the-loop(ヒューマン・イン・ザ・ループ)」と呼びます。最終的な確認と承認をスタッフ自身が行うことで、誤記載を防ぎ、法的・実務的な記録の最終責任を担保します。
生成AIには、まれに事実と異なる情報をもっともらしく出力してしまう「ハルシネーション」という現象が起こる可能性があります。特に体温や血圧などの数値情報や、介助の具体的な手順については、入力した事実と相違がないか確認することが重要です。
ケア記録アシストを効果的・安全に使うためのポイント
ケア記録アシストによる業務効率化を推進しつつ、セキュリティを担保するために押さえておきたいポイントを解説します。
情報入力時は要点を整理して伝える
入力前に以下の要素を意識して、最低限の情報を整理しておくことが重要です。
- バイタルデータ:体温、血圧、脈拍などの数値
- 利用者の状態変化:食事量、睡眠状態、発言、普段と異なる様子
- 実施したケア内容:入浴介助、服薬指導、リハビリの実施状況など
個人情報を守るための「匿名化ルール」を定める
Google Workspaceの法人環境では入力データがAI学習に二次利用されない仕組みになっていますが、介護現場の個人情報保護対策およびコンプライアンスの観点から、プロンプト入力時には個人名やIDを直接入力せず、イニシャルや代名詞(例:「A様」「利用者」)に置き換えて入力するなど、利用ガイドラインやルールを定めておくと安心です。
Geminiのケア記録アシストで介護記録を効率化し、「人と人が繋がるケア」を
Geminiの「ケア記録アシスト」は、介護現場を悩ませてきた記録業務の負担を大幅に削減し、現場の働き方を構造的に変えるポテンシャルを秘めたツールです。
記録業務の効率化によって創出された「時間の余白」は、利用者様一人ひとりと丁寧に向き合う時間や、心を通わせるコミュニケーション、スタッフ同士の連携へと還元することができます。
経営者や管理者の方が明確な活用ビジョンを持ち、Google Workspaceの安全な法人セキュリティ環境のもと適切な運用ルールを構築することで、スタッフの働きやすい環境づくりとケアの質向上が同時に達成されます。
Google Workspaceの導入方法についてご不明な点がございましたら、TSクラウドまでお気軽にご相談ください。

