コラム更新日:2025.11.26

Google Cloud のサービス「Gemini Enterprise」は、企業が Gemini を活用して業務プロセスを自動化する、高度な AI エージェントプラットフォームです。以前は「Google Agentspace」と呼ばれていたもので、2025 年 10 月に改称し、追加機能とともに再発表されました。個別の業務を支援する AI アシスタントではなく、作成した AI エージェントが社内にある大量のデータを横断して検索・分析を行い、自ら業務を遂行します。

この記事では、Gemini Enterprise の導入を検討している方に向けて、その概要、料金(プラン)、導入方法などを解説します。

※以前、Google Workspace に「Gemini Enterprise」という名称のアドオンサービスがありました。この記事で解説する「Gemini Enterprise」は、2025 年 10 月に発表された Google Cloud のサービスで、過去の Gemini Enterprise とは別のものです。

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執筆・監修:TSクラウド編集部

Google Workspace 正規代理店のうち、最も高いランクのプレミア資格を持っています。業界歴 17 年、延べ 3,500 社以上へのサービス提供で培った知識と経験を活かし、Google Workspace の情報を発信しています。

目次

Gemini Enterprise とは?従来の AI との違い

Gemini Enterprise は、Google Cloud が提供する高性能な AI プラットフォームです。テキストの要約や質問の回答のような個別のタスクを処理する AI アシスタントとは異なり、社内のシステムやデータと連携して業務プロセス全体を自動化することができます

AI エージェント作成・運用のプラットフォーム

Gemini Enterprise は、Google Cloud の基盤の上で提供される、企業データの安全な活用に特化した AI サービスです。中心となるのは、Google が提供するマルチモーダル AI 「Gemini」です。

Gemini Enterprise は、高い信頼性と管理体制(ガバナンス)を備えています。主な対象は、AI を安全に業務フローに取り入れたいと考えている大企業・大規模組織です。特に、機密性の高い情報(データ)を扱いながらも、生成 AI を使って業務効率をアップしたい企業に適しています。

従来の AI ツールと何が違うのか

これまでの AI ツールの多くは、人が行う作業をサポートし効率化させる、いわば AI 版のアシスタントでした。あくまでアシスタントであり、AI が出した推論から判断や業務の実行を担うのは人間です。

これに対し、Gemini Enterprise は、業務プロセス全体を自律的に実行する、AI エージェントとしての機能を持っています。たとえば、単に質問に答えるだけでなく、AI が内部・外部のシステムやツールと連携し、自律的に業務を遂行します。(活用例は後述します。)

Gemini with Google Workspace との違い

「Gemini with Google Workspace(Google Workspace の Gemini)」は、Gmail や Google ドキュメントなど、 Google Workspace 内の各アプリと連携して業務を効率化する「AI アシスタント」です。

一方「Gemini Enterprise」は、業務フロー自動化のためのプラットフォームを提供。Google のアプリ同士や外部ツールと連携し、普段人間が行っている業務の自動化をノーコード(自然言語)で実装できるのが大きな強みです。

連携範囲が Google Workspace だけにとどまらず、「Microsoft 365」や「Salesforce」など社内のさまざまなツールに接続して、部署やシステムなどで分断されがちな情報を横断して検索・活用できるようになります。

「Google Agentspace」 を利用していた場合はどうなる?

Google Agentspace はサービスが廃止されたわけではありません。Google Agentspace の中核機能が、ほかの機能と統合されたのが、新しい Gemini Enterprise です。

Google Agentspace を契約中の企業は、機能・料金・サポートレベルなどの変更なしに、引き続き Google Agentspace を利用できます。複数年のサブスクリプション契約をしている場合でも、既存の契約に影響はなく、Gemini Enterprise への移行を強制されることはありません(アップグレードを希望する場合は、移行先や手続きについて、Google Cloud のセールス代理店に相談できます)。

Google Agentspace や Gemini Enterprise に関する疑問や、「業務で AI を使いたいが、安全性は大丈夫?」などのお悩みは、Google のプレミアパートナーである TSクラウドへお気軽にご相談ください。

Gemini Enterprise の主な機能

企業が注目すべき Gemini Enterprise の機能として、以下の 3 つが挙げられます。

マルチモーダル AI テクノロジーを使った情報処理

最先端の AI 「Gemini」をすぐに利用できます。テキスト・画像・動画・音声などさまざまな情報を組み合わせて処理できる Gemini が、システムの頭脳となりあらゆるタスクに対応するため、複雑な形式あるいは大量な情報の処理を実現します。加えて、 Gemini Enterprise の中で NotebookLM Deep Research を利用できます。

企業の大規模な利用を前提としているため、高度なセキュリティとガバナンス機能を備えており、AI を安全に使用できるのも重要なポイントです。

AI エージェント作成・運用のプラットフォーム

自社のビジネスにあう AI エージェントを自在にカスタムできます。ノーコードで AI エージェントを構築できるほか、サードパーティ(Google Cloud パートナー)の AI エージェントを利用したり、作成した AI エージェントを一元管理したりすることも可能です。

外部ツールとの連携

Gemini Enterprise は、Gmail や Google ドライブなど Google の各データソースに直接アクセスできるほか、外部ツールと連携して使うことも可能です。具体的には以下のようなツールやサービスと接続できます。

  • オフィス生産性向上ツール
    Google Workspace、Microsoft OneDrive、Confluence Cloud
  • 主要SaaSおよびビジネスアプリケーション
    Salesforce、SAP、Slack、ServiceNow、Jira Cloud、Confluence Cloud
  • データストア:BigQuery など

情報漏洩対策は?セキュリティ面の安全性

大規模組織での利用を前提として構築されている Gemini Enterprise は、セキュリティやコンプライアンス担保のために、さまざまな対策が講じられています。

  • データの所有権
    Gemini Enterprise のプロンプトや出力結果などのデータは、Google ではなく企業が所有します。またデータは指定のリージョン(保管庫)で暗号化されて保管されます。
  • モデルトレーニングへの不使用
    プロンプトや出力したデータなどが、Google や他の AI モデルのトレーニングに使用されることはありません。(Gemini Enterprise Starter のみ、Google の AI 学習やプロダクトの改善にデータが使用されますが、この設定はいつでも停止できます。)
  • 広告利用と第三者への販売の禁止
    Google が企業のデータを広告に使用することや、第三者に販売することはありません。
  • コンプライアンス要件
    データ所在地の選択、電子ログの保存、VPC Service Controls(VPC-SC)や顧客管理の暗号鍵(CMEK)によるデータ制御などを備えています。

活用方法は? Gemini Enterprise の使い方例

ここでは、企業における部門別の活用シーンに焦点を当て、Gemini Enterprise の使い方をご紹介します。

営業・マーケティング

営業やマーケティング活動における事務作業を Gemini Enterprise で自動化して、担当者が取引の成約や ROI 向上などに集中できる環境を整えます。たとえば以下のような活用です。

  • 顧客データを、事業規模や地域などのセグメントですばやく分類する
  • 顧客の職歴や最近の記事などを分析して、共感を呼ぶトーク内容を提案してもらう
  • 次に取るべきアクションや想定される質問などを AI に提案し、商談のヒントを得る
  • キャンペーンのレポートや各種資料を要約して、会議の準備に役立てる

人事・総務

就業規則、各種手当の申請方法、福利厚生の利用手続きなど、社内に分散している情報をGemini Enterprise で横断的に利用できるようにすることで、従業員からの質問に担当者が対応する負担を削減できます。従業員は質問の回答を即座に得ることが可能です。

他には、

  • 新入社員の情報を分析して、個別のオンボーディング資料を用意する
  • 自社の給与データを分析して、市場の水準と比較する

などにも活用できます。

財務・経理

財務・経理の情報を Gemini Enterprise で分析して、企業の意思決定を迅速化します。具体的な活用シーンとして、以下のようなことが考えられます。

  • クレジットカードの明細を分析して、異常な支出やコンプライアンス違反が疑われる取引などを確認する
  • 決算発表を要約して、業界や競合他社のトレンドをすばやく把握する
  • 財務データの分析と報告書のドラフトを作成し、資料作成にかかる時間を短縮する

など

Gemini Enterprise の導入・利用に関する Q&A

企業で Gemini Enterprise の導入を検討されている方々が抱える、具体的な疑問や質問について、Q&A 形式で解説します。

Gemini Enterprise を自社で導入するには?

Gemini Enterprise は Google Cloud が提供するプロダクトの1つであるため、導入するには Google のアカウントと Google Cloud の初期設定が必要です。

Google アカウントを開設していない企業の場合は、企業の独自ドメインで「Cloud Identity」を申し込み、ユーザーを一元管理できる環境を構築します。Google Workspace を利用している企業の場合は、Google Workspace の ID を Google Cloud に使用できます。

Gemini Enterprise のプラン・料金は?

Gemini Enterprise には複数のプランがあります。

項目 Gemini Business Gemini Enterprise Standard/Gemini Enterprise Plus Gemini Enterprise Frontline Gemini Enterprise Starter
料金(1ユーザーあたり) 月額 21 ドル 月額 30 ドル~ オプション オプション
主な機能 IT の設定不要で使える基本プラン。
  • 外部ツールに接続してワークフローを自動化
  • ノーコードで 独自の AI エージェントを構築
  • AI とのチャットによる検索、分析、コンテンツ作成
    など
Business プランの全機能に、さまざまな機能と高度なセキュリティ・ガバナンスが追加された上位プラン。 Standard および Plus で購入できるオプションで、倉庫や店舗など現場スタッフ向け。 Gemini Business の無料トライアル(30 日間)の後、オプションとして使用できる。
備考 Standard と Plus では、ユーザーあたりのストレージとデータのインデックスが異なる。 公式なプランではない。

Gemini Enterprise の導入効果を最大化するには、貴社の業務や課題に合わせたプラン選びが大切です。「自社に最適なプランは?」「具体的な費用を試算したい」といった疑問やニーズをお持ちの場合は、ぜひ TS クラウドへご相談ください。

AI プラットフォーム「Gemini Enterprise」で毎日の業務が劇的に変わる

Gemini Enterprise は、「AI アシスタント」の枠を超え、組織全体のデータを横断して業務を自動化する「AI エージェントプラットフォーム」として、AI 活用を次のステージへと引き上げます。

エンタープライズグレードの堅牢なセキュリティとガバナンス基盤のもと、業務に必要なAI エージェントの検索、作成、管理が可能。高性能 AI が社内の膨大なデータを横断的に検索・分析し、自律的に業務を遂行することで、各部門の業務プロセスを変革し、生産性の向上が期待できます。この機会に、貴社での Gemini Enterprise 導入を検討してはいかがでしょうか。

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