Gemini 導入時の社内ルールの作り方。法的リスクを防ぎ安全に活用するための 3 つの指針
コラム更新日:2026.02.09
ビジネスにおける AI 活用は避けては通れない状況にあるでしょう。それに伴い、「Gemini を業務に活用したいが、セキュリティが不安で踏み出せない」「社内ルールをどう作ればよいかわからない」と悩む担当者は少なくありません。生成 AI は大幅な生産性向上をもたらす反面、無防備な利用は企業に甚大な損害を与えるリスクをはらんでいます。
特に専任の法務や IT 担当者を置けない企業では、ルールの形骸化が大きな課題となります。今回は、安全に Gemini を社内運用するための実務的なガイドラインの作り方・ポイントをわかりやすく解説します。
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執筆・監修:TSクラウド編集部
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目次
Gemini 導入において「社内ルール」が不可欠な理由
Gemini を導入することで、資料作成の自動化やデータ分析の高速化など、膨大な「業務効率化の恩恵」を享受できます。しかし、これらは適切な管理体制があって初めて成立するもの。利便性と引き換えに企業の信頼を失墜するリスクが伴うことを理解するためにも、「社内ルール」が欠かせません。
利用者がリスクを正しく理解していなければ、知らぬ間に機密情報を AI に学習させてしまうといった事態が起こり得ます。また、社内ルールが整備されていない場合、最も危険なのが「シャドー AI」の発生です。シャドー AI とは、会社が公式なツールやルールを提供しないうちに、従業員が自己判断で生成 AI を業務で使用してしまう行為などを指します。AI ツールでは、入力した内容が AI の再学習に利用される設定がデフォルトとなっている場合があるため、顧客名簿やプロジェクト資料をアップロードしてしまうと、事実上の情報漏洩となります。
AI の利用を「一律禁止」にするのは、現代のビジネス環境において現実的ではないため、会社側は公式なプラットフォームを提供したうえで、「何を入力してはだめか」「利用可能な業務範囲」「生成物をどう扱うか」などを社内ルールで明確に定めることが重要です。
Gemini 利用時に必ず押さえるべき 4 つのリスク
Gemini をビジネスで利用する際、技術的なセキュリティだけでなく「法的リスク」への理解が不可欠です。万が一のトラブル時に「知らなかった」では済まされない、4 つの主要なリスクをおさらいし、社内ルール策定に備えましょう。
個人情報・機密情報の情報漏洩のリスク
生成 AI における最大のリスクは、入力内容が AI の再学習に利用されることです。顧客情報や開発途上の製品情報など、社内の機密情報を生成 AI に読み込ませてしまうと、生成 AI の学習データとして、他者への回答の一部として出力されるリスクがあります。
個人情報保護法では、個人データの適切な管理が求められており、法令違反に問われる可能性があるのはもちろんのこと、社会的信用の失墜リスクをはらんでいます。
著作権侵害(類似性と依拠性)のリスク
AI が生成したコンテンツが、既存の著作物と酷似していた場合、著作権侵害となる恐れがあります。法的には、既存の著作物と似ているかという「類似性」と、既存の著作物をもとにしたかという「依拠性」の 2 点が判断基準となります。
AI が学習データの中にあった特定の著作物をそのまま、あるいはきわめて近い形で出力してしまった場合、利用者が意図していなくても権利者から訴えられるリスクがあります。
Google の利用規約と商用利用範囲のリスク
Gemini には、個人向けの無料版と、エンタープライズ級のデータ保護がなされたビジネス版があります。大きな違いはデータの扱いです。無料版では、入力したデータが AI モデルの改善に利用される可能性があることが明記されています。一方、ビジネス版では入力データがモデルの学習に利用されないことが保証されています。この規約の違いを正しく理解せずに業務に利用してしまうと、思わぬインシデントにつながりかねません。
権利侵害発生時の企業の法的責任のリスク
AI が生成した成果物によって第三者の権利を侵害した場合、その責任を負うのは利用者である企業です。AI 開発者が責任を肩代わりすることはありません。そのため、AI の出力はあくまで「下書き」であり、最終的な法的責任は人間が負うという認識をルール化する必要があります。
導入初期に定めるべき「社内ルール」3 つの指針
法的リスクを回避しつつ、現場の生産性を止めないためには、具体的で「実行可能」なルールが必要です。導入初期に最低限定めるべき、3 つの指針を提示します。
入力禁止情報の明確なリスト化
「機密情報を入れないでください」という抽象的な表現では、従業員によって解釈が分かれます。ルール化する際は、具体的に何を「入力禁止」とするかをリスト化して明示しましょう。たとえば、顧客の氏名、メールアドレス、未発表の経営情報、取引先との契約内容などが該当します。これらを「入力禁止リスト」として定義し、社内で周知徹底することで、意図しない情報流出を防ぐことにつながります。
人間による検証(ファクトチェック)の義務化
Gemini を含む生成 AI には、真実ではないことをもっともらしく回答する「ハルシネーション」という特性があります。AI の回答をそのままビジネスの公式見解として発信することは、誤情報の拡散リスクを招きます。「生成物は必ず人間が目視で確認し、根拠となる一次情報を確認する」という工程をルールに盛り込みましょう。特に数字、統計データ、法律に関する回答については、専門的な知識を持つ人間による確認が必須です。
利用範囲と外部公開基準の設定
AI をどの業務で、どの程度使ってよいかの基準を設けます。用途に応じた承認フローの定義が重要です。「社内向けのアイデア出し」であれば比較的自由度を高くし、「社外向けのプレスリリースや公式文書」であれば上長の承認を必須とする、といった使い分けです。用途に応じた「出口戦略」を明確にすることで、現場の迷いを払拭できます。
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⇒今すぐ相談するGemini 社内ルール策定の 5 ステップ
ルールは一度作れば終わりではありません。組織に浸透させ、かつ最新の動向に合わせるための策定手順を 5 つのステップで解説します。
①利用目的と対象者の明確化
まずは、なぜ Gemini を導入するのかという「目的」を定めます。単なる効率化なのか、新規事業のアイデア出しなのかを明確にしましょう。また、いきなり全社で展開するのではなく、まずは IT リテラシーの高い部署など、対象者を絞ってスタートすることで、管理の目が届きやすくなります。利用対象者を段階的に広げることで、想定外のトラブルを未然に防ぐことにもつながります。
②現状+業務フローとリスクの洗い出し
現在、どのような業務に AI を組み込む余地があるかを精査します。その際、扱うデータの機密レベルを「一般公開されている情報」「社内限定情報」「極秘情報」というように分類しましょう。どの業務でどのような情報を扱うのかを把握することで、どこまでの利用を許可し、どこに制限をかけるべきかの判断基準が定まります。
③法的・技術的制約の整理
Google の利用規約や自社のコンプライアンス指針を照らし合わせます。ビジネス版の Gemini であれば、データの二次利用が制限されていることを確認し、そのうえで自社独自の制約を追加します。入力禁止情報や禁止事項(他者を誹謗中傷する内容の生成など)を明示しましょう。システム設定で制御できる範囲と、人間が気をつけるべき運用ルールを明確に切り分けます。
④暫定ルールの運用と現場からのフィードバック
最初から完璧なルールを目指すと、現場の活用を妨げてしまいます。まずは「暫定版」として運用を開始しましょう。現場から「このルールは厳しすぎて仕事にならない」「判断基準がほしい」といった声を集めることが重要です。実際の利用シーンに即した微調整こそが、ルールの形骸化を防ぐ鍵です。
⑤定期的なルールの見直しとアップデート
AI の技術革新は非常に速いです。半年に一度、あるいは大きな機能アップデートのタイミングでルールを見直す体制を構築しておくとよいでしょう。「最新の安全」の維持を企業の社会的責任と考え、変化に柔軟に対応できる体制を整備することも大切です。
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社内ルールの遵守を「社員の意識」だけに頼るのには限界があります。システム側で物理的な制約と保証を持たせられるのが、ビジネス向けに提供されている有料プラン、Google Workspace 上で Gemini を活用する最大のメリットです。
「データが学習に使われない」という契約上の保証
ビジネス版の Gemini を利用する最大の利点は、強固なプライバシー保護です。Google の利用規約において、対象のアカウントから入力されたデータは、モデル学習に利用されないことが、契約上保証されています。
管理者による一元管理(ガバナンスの強化)
無料版の Gemini は、各社員の利用状況を会社が把握できません。一方、ビジネス版の Gemini であれば「管理コンソール」から利用状況や設定を一元管理可能です。ライセンスの適切な配付はもちろん、利用ログの確認を通じてルールが正しく守られているかを監査できます。万が一、不適切な利用が疑われる際も、管理者側で即座に対応できる環境を整えることができます。
既存の Google アプリとのシームレスな連携
ビジネス版の Gemini なら、Google ドキュメントや Gmail の画面など、Google のアプリ上で直接 Gemini を利用できます。Gemini とアプリのシームレスな連携により、利便性とセキュリティ強化を両立するのが、ビジネス版 Gemini のメリットです。
Gemini 無料版と有料版の違いを比較。ビジネス活用に最適な選択肢とは?
Gemini アプリの無料版と有料版の違いについて解説。それぞれの概要から、ビジネスに最適な有料版 Google Workspace の生成 AI Gemini についてもご紹介します。
Gemini の社内ルールを浸透させて安全に組織活用できる環境づくりを
Gemini の導入は、企業の生産性を飛躍させる大きなチャンスです。しかし、その力を正しく発揮させるためには「社内ルール」という土台が欠かせません。安全な環境が整ってこそ、社員は萎縮することなく AI を活用し、新しいアイデアの創出や業務改善に挑戦できるようになります。
まずは「情報漏洩」「著作権」「正確性」の 3 点を軸に、「入力禁止情報の明確なリスト化」「人間による検証の義務化」「利用範囲と外部公開基準の設定」の 3 つの指針を踏まえた、自社に最適なガイドラインを策定しましょう。社内ルール作りは、AI とともに成長できる組織づくりの第一歩となるはずです。
