【事例あり】生成 AI 社内ガイドライン策定ガイド。必須項目や手順を解説

コラム更新日:2026.02.05

日々、目まぐるしいスピードで進化する生成 AI は、業務効率化の強力な武器となる一方、適切な管理を欠くと機密情報の漏洩や著作権侵害といったリスクを伴います。そうした背景もあり、「導入を進めたいがセキュリティが不安」「実効性のあるルール作りがわからない」と足踏みしている担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、企業が策定すべき生成 AI ガイドラインの必要性から、盛り込むべき必須項目、具体的なステップまでを徹底解説します。公的機関の事例も参考に、安全で持続可能な生成 AI 活用の土台を築きましょう。

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執筆・監修:TSクラウド編集部

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目次

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生成 AI ガイドラインとは

「生成 AI ガイドライン」とは、企業や組織が生成 AI を安全かつ効果的に活用するために策定する運用ルールや指針のことです 。急速に普及する生成 AI は業務効率化をもたらす一方、機密情報の漏洩や著作権侵害、出力内容の不正確性といった法的・倫理的リスクを伴います。

ガイドラインを策定することで、これらのリスクを最小限に抑えつつ、生成 AI の導入効果を最大化できることでしょう。主な内容には、利用可能な業務範囲、入力データの取り扱い、生成物の確認手順、禁止事項などが含まれます。 政府の指針を参考に自社独自のルールを設けることは、従業員が迷わず正しく生成 AI を使いこなせる環境を整備することにつながります。

企業が生成 AI ガイドラインを策定すべき3つの理由

企業が生成 AI ガイドラインを策定すべき 3 つの理由を解説していきます。

理由①機密情報・個人情報の漏洩リスクの防止

生成 AI を利用するうえで最も大きな懸念点は情報の流出です。 生成 AI は、ユーザーが入力したプロンプト(指示文)をモデルの精度向上のための学習データとして利用する設定がデフォルトになっている場合があります。

もし、従業員が顧客の個人情報や自社の未発表プロジェクトの機密情報を不用意に入力してしまうと、その情報が AI の学習に取り込まれ、他者の回答として出力されてしまうリスクが生じます。ガイドラインによって「入力可能な情報の範囲」あるいは「入力禁止データ」を厳格に定めることは、企業の信頼を守るために不可欠 です。

理由②著作権侵害による法的トラブルの回避

生成 AI によって出力された画像や文章が、既存の著作物と酷似している場合、意図せず著作権を侵害してしまう可能性 があります。

特に商用利用をする際には、生成物の権利関係がどうなっているか、どのような場合に権利侵害となるのかを正しく理解しておかなければなりません。法的トラブルは企業のブランドイメージを大きく損なうため、ガイドラインで利用上の注意点を明文化しておく必要があります。

理由③ハルシネーション(嘘の回答)への対策

生成 AI は「事実に基づかない、もっともらしい嘘」をつくことがあります。これは「ハルシネーション」と呼ばれる現象です。

生成 AI の回答をそのまま公式文書や顧客対応に使用し、誤った情報を発信してしまった場合、企業の社会的責任が問われます。 回答を鵜呑みにせず、必ず人間がファクトチェック(事実確認)を行うフローを義務付けるために、ガイドラインの策定が求められます。

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生成 AI ガイドラインに盛り込むべき必須項目

生成 AI ガイドラインの実効性を高めるうえで盛り込むべき必須事項があります。以下の 4 点は必ず盛り込むようにしましょう。

  • 利用可能な範囲(対象者・対象業務)の定義
  • 入力データの制限と禁止事項
  • 生成物の取り扱い・ファクトチェックの義務化
  • 違反時の報告フローと罰則規定

一つひとつ解説していきます。

①利用可能な範囲(対象者・対象業務)の定義

まず、利用可能な範囲を定義します。具体的には「対象者」「利用ツール」「推奨業務」「禁止業務」などが挙げられます。以下はそれぞれの項目と検討事項の例です。

項目 検討事項
対象者 正社員のみか、派遣社員や業務委託先も含むか
利用ツール 会社が契約した有料版(例:Google Workspace の Gemini など)に限定するか、個人アカウントの利用を認めるか
推奨業務 議事録の要約、メールの下書き、アイデア出し、プログラミング補助など
禁止業務 最終的な法的判断、人事評価の決定、医療診断など


このように範囲を細かく定義することで、業務外での不適切な利用や、シャドー AI (会社が把握していない AI 利用)の防止につながります。

②入力データの制限と禁止事項

最も重要なのが、プロンプトに入力してはいけないデータの指定です。具体的にどのような情報を入力してはいけないかを明示することが大切です。具体的な「NG 例」を提示することで、従業員が迷わずに判断できるようになります。

カテゴリ 具体的な情報(例)
個人情報 氏名、住所、電話番号、メールアドレス
顧客・取引先情報 取引内容、機密保持契約( NDA )下にある情報
自社機密 独自のアルゴリズム、未公開の財務データ、 ID ・パスワード


また、例外的なルールとして、 API 連携を利用している場合や、学習に利用されない「オプトアウト設定」が有効な環境であれば、どこまで許容するかについても触れておくべきでしょう。

③生成物の取り扱い・ファクトチェックの義務化

生成 AI が出力した内容をどのように扱うべきかのルール設定も重要です。生成物の取り扱い方やファクトチェック、生成されたコンテンツを外部に公開・利用する際の確認プロセスも定めましょう。

項目 検討事項
人間による最終確認 生成 AI が生成した内容を必ず人間が校閲し、内容の正確性を保証するなど(ファクトチェック)
出典の明記 AI を使用したことを明記すべきケース(例:レポート、記事など)の判断基準を設ける
権利確認 画像生成 AI を使用する場合の著作権確認フローを設ける


特に、外部に公開する文章や図表については、二重チェック体制を敷くなどの工夫が推奨されます。またそもそも生成物の商用利用が可能かどうか、生成 AI を提供しているサービスのポリシーも確認しておきましょう。

④違反時の報告フローと罰則規定

ガイドラインが定めるルールに違反した結果、情報漏洩や他者の権利侵害といったトラブルが発生した場合の対応策を定めることも不可欠です。誤ってルール違反となる情報を入力してしまった場合や、その他の問題が発生した場合の対処手順を明確にします。

項目 検討事項
報告先 システム管理者、上長、または法務部への即時報告ルートを設定する
事後対応 入力データの削除申請手順を明確化する
罰則 就業規則に基づいた処分が行われる可能性があることを明記する


迅速な報告フローを整え、被害を最小限に食い止める必要があります。

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生成 AI ガイドライン策定の 6 ステップ

生成 AI ガイドラインは、ただ作成するだけでなく、社内の実態に即している必要があります。ここでは策定に至るまでの段階を 6 つのステップに分けて解説していきます。

  1. 社内の利用状況とニーズの把握
  2. 想定されるリスクの洗い出しと評価
  3. ガイドライン草案の作成
  4. 法務・情シス・人事・関係部署との調整
  5. 従業員への周知と説明会の実施
  6. 継続的なモニタリング体制の構築

①社内の利用状況とニーズの把握

まずは社内調査を実施し、従業員による生成 AI の利用実態と利用意向を把握しましょう。調査の核となるアンケートでは「どのような業務で利用したいか」「どのような不安があるか」などの設問を用意し、現場の具体的なニーズや懸念点を収集することが大切 です。

実際の利用状況と従業員のニーズを踏まえることで、利用禁止事項ばかりで使い勝手の悪いガイドラインになることを回避し、実効性のあるルール策定を目指します。

②想定されるリスクの洗い出しと評価

次に自社の業種や取り扱うデータの特性を考慮し、想定されるリスクを洗い出しましょう。業種ごとのリスクとしては、以下のようなリスクが考えられます。

  • 金融・医療など :個人情報の取り扱いに高いリスクがある
  • 制作・クリエイティブなど :著作権侵害のリスクが経営に直結する
  • 製造・技術開発など :独自の技術ノウハウの流出が懸念される

単に「情報漏洩」という抽象的なリスクを捉えるのではなく、「自社にとって『絶対に避けるべき事態』とは何か」を明確に定義し、定義に基づいたリスクの優先順位付け、そしてリスクを回避するため、プロンプト制限や利用ツールの限定といった具体的な対策を講じる必要があります。

③ガイドライン草案の作成

収集したニーズとリスク評価に基づき、ガイドラインを作成します。策定にあたっては、省庁などが公開している指針を参考に、自社の状況に合わせた草案をまとめましょう。

最初から完璧を目指さず、まずは「草案」として柔軟に運用を開始する姿勢が重要です。 テンプレートを活用して項目漏れを防ぎつつ、専門用語を避けたわかりやすい表現を心がけましょう。

④法務・情シス・人事・関係部署との調整

ガイドラインの草案が完成した後に必要なのが、内容の精査と調整です。単なる形式的な確認ではなく、ガイドラインの実効性を担保し、組織全体へ浸透させるための重要なプロセスです。

  • 法務部門: 著作権法や個人情報保護法等の法令との整合性を確認
  • 情報システム部門: 技術的なセキュリティ対策やツール管理規定との整合性を検証
  • 人事部門: 違反時の対応ルールと就業規則の一貫性を確保

こうした多角的な専門視点を反映させることで、ガイドラインに実効性を持たせ、現場での活用を促すとともに、企業を守る「盾」として機能させることが可能になります。特に、法務と情シスの両部門の連携は、法的リスクと技術的リスクという二大リスクに同時に対処するために重要です。

⑤従業員への周知と説明会の実施

ガイドラインは策定して終わりではなく、全従業員への周知徹底が不可欠です。理解度と遵守率を高めるため、以下の施策を組み合わせて実施します。

  • オンライン説明会: リスクや具体例を解説し、質疑応答や役員メッセージを通じて組織の本気度を伝える
  • eラーニングの義務化: 理解度テストを必須とし、全従業員の受講完了を目指す
  • 「納得感」の醸成: 単なるルールの押し付けではなく、背景にあるリスクや、なぜ必要かを丁寧に伝える

ガイドラインは制約ではなく、自身を守り生成 AI を正しく使いこなすための方針として定着させることで、従業員の自律的な遵守を促し、企業価値を守ることにつなげます。

⑥継続的なモニタリング体制の構築

生成 AI の技術や関連法規は短期間で急速に変化しているため、ガイドラインは策定して終わりではなく、定期的な見直し(例:半年に一度)と更新を前提とした運用体制を構築しましょう。

また、不適切な利用の有無を把握するため、ログ監視等による定期的なモニタリングも不可欠です。こうした継続的なメンテナンスを通じて、新たなリスクへの迅速な対応と、便利な新機能の安全な活用を両立させていきます。

【事例紹介】公的機関が策定している生成 AI ガイドライン

ここでは、生成 AI に関して具体的にどのようなガイドラインが策定されているのか、参考にすべき公的機関の事例を紹介します。

1. 東京都

東京都では、「文章生成AI利活用ガイドライン・活用事例集」を策定し、職員が業務で活用する際のルールを明確にしています。生成 AI の特徴から利用上のルール、注意点や効果的なプロンプトなど網羅的にガイドラインとして、わかりやすく解説しているのが特徴です。

2. デジタル庁

デジタル庁では、経済産業省や総務省等と協力して検討を行い、政府機関全体での活用を視野に入れた標準的なガイドラインとして「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」を策定しています。リスクレベルを判定する「高リスク判定シート」を提示しているのが特徴です。

3. 総務省

総務省では、「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>」を策定し、自治体における AI 導入の進め方や留意点等を、具体的な手順を踏まえて紹介しています。各自治体の活用事例だけでなく、すぐに使えるガイドラインのひな形も公開しているのが特徴です。

ガイドラインにプラス!生成 AI を安全に活用するための3つのポイント

生成 AI を安全に活用するためには、ガイドラインの策定に加え、定期的な見直しや従業員への教育も重要です。ここでは、より安全に生成 AI を活用するためのポイントを 3 つご紹介します。

ポイント①シャドー AI を抑止する社内体制の作り方

従業員が「会社支給のツールは使いにくい」と感じると、私用の端末やアカウントで AI を使い始める「シャドー AI」が発生し、深刻なセキュリティリスクとなります。これを防ぐには、単に利用を厳しく制限するだけでなく、会社として「安全かつ便利な公式環境」を提供することが不可欠です。

具体的には、Google Workspace の Gemini のように、入力データが学習に利用されないことが保証された法人向けサービスを導入し、その利用を推奨するアプローチが効果的 です。利便性と安全性を兼ね備えた環境を整備することは、従業員の独断による利用を抑止し、企業価値を守るための対策となります。

ポイント②最新情報のキャッチアップと定期的な見直し

AI 分野の進展は非常に急速です。たとえば、わずか数か月の間に新しい法解釈や裁判例が示され、「画像生成の著作権リスク」に関する判断基準も変化する可能性があります。そのため、IT 担当者や法務担当者は、常に最新の法規制の動向や技術トレンドを注視し、ガイドラインを実態に即した最新の状態に保つ必要があります。

ポイント③従業員のリテラシーを底上げする研修

生成 AI の運用において、ルールで縛ることよりも重要なのが、従業員一人ひとりのリテラシー向上です。自ら判断できる力を養うことで、結果として組織全体のリスク回避能力は最大化されます。

  • プロンプトエンジニアリング講習: 意図した成果を出す「正しい命令」を学び、生産性を高める
  • ハルシネーション体験ワークショップ: 生成 AI の「もっともらしい嘘」を実際に体験し、情報の真偽を見極める批判的思考を養う
  • 著作権侵害ケーススタディ: 具体的な事例を通じ、法的境界線を直感的に理解する

上記はあくまで例ですが、このような教育を通じて、従業員が「ルールを守らされる」のではなく、自発的に判断できる環境を整えます。

TSクラウドでは、組織全体の AI 活用を下支えするサポートプログラムを提供しています。単なる導入に留まらない、組織的な生成 AI 活用をトータルでご支援します。

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社内ガイドラインを策定して安全な生成 AI 活用を実現しよう

生成 AI は、正しく活用することで企業の生産性を飛躍的に向上させる原動力となります。その真価を安全に引き出すためには、明確な「運用ルール」の策定が不可欠です。

本記事で解説した 6 つのステップを参考に、まずは自社の実情に即した草案作成から着手してみてください。策定の過程で迷いが生じた際は、東京都や総務省といった公的機関の指針を積極的に取り入れていきましょう。

生成 AI ガイドラインという安全な土台の上に築かれる変革こそが、持続可能な成長を実現する鍵となります。

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