生成 AI の著作権侵害事例。企業が知っておくべきリスクと対策
コラム更新日:2026.02.13
生成 AI の普及が進む一方で、著作権侵害の問題も拡大しています。著作権トラブルに対する不安を解消するには、生成 AI を正しく理解し生成 AI 活用に関するルールを定め、トラブルの芽に先回りで対処しておく必要があります。
この記事では、生成 AI の著作権侵害について、国内外の事例と具体的な対策などを紹介します。自社のデータが生成 AI に学習されるリスクについても解説しますので、安全な生成 AI 運用にお役立てください。
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執筆・監修:TSクラウド編集部
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目次
生成物が著作権侵害と判断されるには?
生成物が著作権侵害と判断される基準は、人間が作成した著作物と同様で、特別扱いはありません。具体的には、生成物に以下の 2 点が両方とも認められる場合です。
| 類似性 | すでにある著作物に見た目や内容が似ているか |
|---|---|
| 依拠性 | 「既存の著作物を参考にした」と認識できるか |
生成 AI が既存の著作物をデータとして学習していると、似ているものを生成しやすく、結果として著作権侵害と判断される可能性が高まります。たとえば、「プロンプトにブログ記事や講演などの内容を入力する」「有名キャラクターのイラストをソースにアップロードする」「インターネット上の音声や映像を参照させる」などです。企業が生成 AI を利用する際は、 意図せず既存のデザインや文章に似たものを生成し、そのまま商用利用してしまうリスクがあることを認識 する必要があります。
生成 AI の著作権侵害に関する事例
日本の著作権法は「人間による創作物」を著作権保護の対象としてきたため、「AI が生成したものは著作物なのか」という議論は発展途上にあります。生成 AI で作成したイラストなどで著作権侵害が判断されたケースは限定的ですが、クリエイター(著作権者)の抗議で企業が生成物の使用を停止するなど、権利侵害の問題は拡大しつつあります。
以下では具体的な事例を紹介します。自社に類似する行為がないか、生成 AI 利用の参考にしてみてください。
生成画像が「人による創作」とされたケース
SNS上で公開されていた生成 AI を利用して作られた画像を、無断で複製して自身が販売する書籍の表紙に使用したことが、著作権違反として書類送検されたケースです。通常、AI が生成した画像そのものには著作権が発生しないと考えられています。しかしこの事例では、画像の作者が生成された画像を確認しながら、プロンプトで詳細な修正を繰り返していました。この試行錯誤の過程が「創作的寄与(人による関与・工夫)」と評価され、著作権が認められることに。許諾のない複製は著作権侵害と認められました。
有名キャラクターと似ていたケース
海外の AI サービス事業者が生成した画像が、日本企業の著作権を侵害していると認められた事例です。この事業者の AI が、日本の有名キャラクターによく似た画像を生成・出力しており、キャラクターの著作権を持つ企業の現地代理店が裁判所に提訴。著作権侵害が認められ、事業者に生成・出力停止と損害賠償を命じる判決が下されました。
AI 事業者の学習データ利用については、新聞社や映画業界は著作権侵害を主張していますが、各国の法解釈や業界団体の動きによっても異なります。日本では、生成 AI の学習に著作物を利用すること自体は、著作権法で認められています(2026 年 2 月時点)。しかし、出力された画像が既存の作品と似ている場合(類似性)、かつその作品を知っていて生成したとみなされる場合(依拠性)は、「AI が自動的に生成した」という主張は通用しないため、注意が必要です。
著作権侵害でなくても対応が必要となるケース
著作権侵害でなくても、企業が対応を迫られる場合があります。たとえば、著作権以外の別の権利侵害が疑われるときや、企業倫理を問われるようなケースです。実際に起きた事例として、以下のようなものが挙げられます。
- 画材を扱う企業が、クリエイターの脅威とされる AI 画像と疑われるポスターを使用して、「顧客への配慮がない」と炎上した。
- AI で生成した広告を使用した企業が「安っぽい」「AI タレントが人間のモデルの仕事を奪う」「気持ち悪い」などで問題視された。
- クリエイターの画風を反映する画像生成 AI サービスが、「絵を悪用される」などの声が殺到して事業者が謝罪、サービスを一時停止・改修した。 など
コンプライアンス(法令遵守)は、企業の持続可能性を左右する最低限のラインです。しかし「法に反していなければ何をしてもよい」ということではなく、企業イメージの低下を避けるためにも、配慮は必要です。生成 AI の商用利用におけるリスクは、下記の記事で解説していますので、そちらもご覧ください。
Geminiで生成した文章や画像の商用利用は可能?Google のポリシーや利用時の注意点
Google のポリシー、AI の商用利用で考えられるリスクや注意点、企業で生成 AI を活用するポイントを解説しています。
著作権侵害とならないための対策
著作権トラブルを未然に防ぐためには、技術的な対策と組織的なルールの両面からアプローチすることが不可欠です。具体策として、以下のようなことを意識しましょう。
社内ルールを策定しておく
まずは「AI 利用ガイドライン」を策定し、利用可能な業務範囲や、何を入力してはいけないかを明確に定義します。具体的には、プロンプトに著作権者・作品名・文章などの入力を禁止する、既存のデータを使用する際は著作権者の許諾をとる、生成物をそのまま外部へ公開する前のチェックフローを確立するなどが挙げられます。また、「AI で生成したコンテンツには、その旨を明記する」などの透明性を確保することも、企業の信頼性につながります。法務担当者が不在の場合でも、公的なガイドラインを参考に、最低限の禁止事項を周知徹底することが、リスク回避の第一歩です。
権利関係に対応済みのツールを使用する
自社データのみでは AI 活用が難しい場合は、権利関係に対応済みのツールを使う ことで、著作権侵害のリスクを削減できます。たとえば、Adobe が提供する「Adobe Firefly」のような、著作権をクリアしたデータを学習しているツールや、Google の生成 AI「Gemini」のように、著作権保護の補償を提示しているサービスです。
こういった商用利用を前提とした AI ツールには、法的トラブルが発生した際に、ベンダー側が補償を行う規約が含まれていることがあります。そのため企業が安心して AI を活用するには、個人向け無料ツールではなく、ビジネス向けの契約が締結できるツールを選ぶことをおすすめします。
生成プロセスを保存・管理する
万が一、著作権侵害の疑いをかけられたときに備えて、「その生成物がどのように作られたか」を証明できる記録を保存・管理することが重要です。どのようなプロンプトを入力し、どのような修正を重ねたのかという生成ログを残しておくことは、「意図的な盗用ではない(依拠性がない)」と示す証拠となります。
生成物のチェックを行う
最終的な生成物を公開する前に、既存の著作物と似ているか、模倣と判断されないかを、専用のツールや目視で確認する工程を設けます。イラストであれば「逆画像検索ツール」、文章であれば「コピペチェックツール」などです。意図しない類似でも著作権侵害に問われるため、生成 AI の出力を過信せず、必ず「人間の目による最終確認を行う」ことが重要です。
自社のデータが生成 AI に学習されるリスクもある
著作権を「侵害する」リスクだけでなく、自社の機密情報や著作権を「侵害される(学習される)」リスクにも注意が必要です。
無料版の AI 利用による情報漏洩
無料版の生成 AI は、ユーザーが入力したデータを AI モデルの学習に利用する設定がデフォルトとなっていることがあります。ここに自社製品の企画書、顧客情報、独自のソースコードなどを入力してしまうと、その情報が AI に学習され、他者への回答として出力されてしまう恐れがあります。
これは著作権の問題を超え、機密事項の漏洩という重大なセキュリティリスクです。従業員が個人アカウントで無料版 AI を利用する「シャドー AI」を禁止する、安易に業務データを入力しないよう周知徹底するなど、システム的な制限と教育で情報漏洩リスクを低減します。
企業が AI を活用するには法人向けツールが不可欠
データ学習のリスクを回避するためには、入力データが AI の学習に利用されないことを保証している法人向けツールの導入が不可欠です。Google Workspace では、データの所有者は企業であり、Gemini で入力した情報が AI の学習に使用されることはありません。管理者が Gemini が参照できないデータの種類をあらかじめ指定しておくことも可能です。従業員が安全に AI を活用するためには、企業側で AI を活用できる環境を整備して、業務効率の向上と強固なセキュリティを両立することが大切です。
生成 AI の著作権侵害リスクを抑える環境構築と研修の実施
技術的な対策だけでは不十分なため、社内で研修を実施することも必要です。たとえば、著作権が問題となる使い方を学ぶ、定期的に最新の事例や法解釈を共有するなどです。従業員一人ひとりが、著作権侵害のリスクを正しく理解し、AI を適切に利用することが、権利侵害の回避につながります。リソース不足などで研修を企画するのが難しい場合は、外部の研修サービスや、 eラーニングの利用なども検討しましょう。
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生成 AI は、その学習データをもとに生成を行うため、学習データによっては、既存のコンテンツに似ているものを生成することがあります。この記事で紹介した事例からわかるように、著作権侵害(あるいは企業として対応が必要となる問題)は、悪意がなくても起こり得るリスクです。
安全に AI を活用するための第一歩は、「社内ガイドラインの策定」「データの機密性が守られる環境の整備」「公開前の徹底した確認」など、組織的な体制を整えることです。あわせて、従業員への研修や、最新の法解釈を注視することも大切です。リスクを適切にコントロールしながら AI を活用する姿勢が、企業の競争力強化と信頼性維持の両立につながるでしょう。
