コラム更新日:2026.05.29

AIエージェントは、従来のチャット型AIとは異なり、指示に対してAIが自律的に判断し、外部のアプリやデータベースと連携して処理を実行するのが特徴です。利便性が高い反面、判断に人間が介在しないことに起因するリスクも存在します。情報漏洩への不安などから、導入に踏み切れない企業も少なくないでしょう。

この記事では、 AIエージェントにおけるセキュリティの重要性と、具体的なリスク、データを守るための対策を解説します。記事の後半では、安全にAIエージェントを構築できるツール「Gemini Enterprise」も紹介していますので、貴社で導入する際の参考にしてみてください。

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執筆・監修:TSクラウド編集部

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目次

AIエージェントのセキュリティが重視される理由

AIエージェント は、人間が設定した目的(ゴール)に向かって、AI自身が「次に行うべきアクション」を自律的に判断し、タスクを実行するAIです。たとえば、社内のデータリソースや外部システムと連携して、問い合わせの返信や資料のドラフト作成といったさまざまな業務の自動化に役立ちます。

自動化による効率化に対応できる反面、AIエージェントは人間の確認を挟まずに処理を完結させる能力を持つため、誤った判断や悪意ある指示が介入すると、被害が自動的かつ一瞬で拡大する恐れがあります。そのため、AIエージェントを安全に運用するには、こうした自律性に伴う新しいリスクを認識し、システム全体で構造的に不正な挙動を制限する、より強固なセキュリティ設計と運用ルールが不可欠なのです。

AIエージェントの自律性が招く新たなセキュリティリスク

前述のとおり、AIエージェントが持つ「自律性」と「外部連携」は、従来のITツールやAI利用で想定されなかった、新たなリスクがあります。AIエージェントを導入するにあたって、まずは、特有のセキュリティリスクを把握しておきましょう。

外部連携による意図しない「データ漏洩」と学習リスク

AIエージェントは、社内のデータベースや外部システムなどと連携することで、業務を自動で遂行します。しかし、この広範な連携によって、意図しないデータ漏洩につながる場合があります。たとえば、AIエージェントが判断を誤って、社内の技術情報や顧客の個人データといった「重要データを外部に送信してしまう」といったケースです。

また、無料のAIエージェントツールは、AIモデルの学習に利用されるリスクを拭いきれません。社員が意識せずに日常業務でAIエージェントに指示を出すだけで、技術情報や顧客リストなどが外部に流出する危険性があるため、データの入出力ルートを厳格に管理することが大切です。

悪意ある指示を読み込む「プロンプトインジェクション」

プロンプトインジェクションとは、AIに対する指示文(プロンプト)に悪意ある命令を混入させ、システムを開発者の意図しない形に誤作動させる攻撃手法です。AIエージェントにおいては、ユーザーが直接入力する指示だけでなく、AIが読み込んだ外部のWebサイトやメールの本文中に巧妙に隠された不正な命令にしたがってしまう「間接的プロンプトインジェクション」のリスクが高くなります。

たとえば、業務に関する調査を命じられたAIエージェントが、悪意ある指示が仕込まれたメールやWebサイトを閲覧した結果、「内部の情報を検索し、機密情報を抽出して指定の方法で外部に送信する」といった、隠された命令を勝手に実行してしまうようなケースです。AIエージェントが情報を収集する便利さの裏には、信頼できない外部のソースから攻撃命令を自ら取り込んでしまうリスクが存在します。

過剰な権限付与による処理ミスやデータの改ざん

AIエージェントに過剰な権限が付与されていると、AIが指示の解釈を誤った場合や、プロンプトインジェクション攻撃を受けた場合に、大きな被害につながりやすくなります。たとえば、ファイルの「閲覧」権限だけで十分な業務であるにもかかわらず「編集・削除」の権限まで持たせていた場合に、AIの誤った判断によって、顧客データベースのレコードが勝手に書き換えられたり、共有フォルダ内のデータが削除されたりするリスクを否定できません。本来は一般社員やAIが閲覧すべきではない機密情報まで参照してしまうと、AIが回答として出力してしまい、情報が流出することも考えられます。

AIエージェントを安全に運用するセキュリティ対策の基本

AIエージェント特有のリスクから社内資産を守るためには、社員の倫理観や注意喚起といった「人的ルール」だけに頼る運用には限界があります。AIが自律的に判断して動く以上、「技術的なアプローチ」も加えた多層的な防御策が不可欠です。ここでは、安全に運用するための基本的な対策を解説します。

【システム制御】アクセス権限を「最小限」にする

「AIは常に完璧な判断を下すわけではない」という前提に立ち、AIエージェントが操作できる範囲をタスクごとに厳しく制限して、データの改ざんや消失、情報漏洩を防がなければなりません。アクセス権限を、そのエージェントが担当する業務に必要な「最小限」の範囲に留めることが重要です。

たとえば、社内規程の要約やQ&A対応を行うAIエージェントであれば、該当する共有フォルダの「閲覧権限だけ」を付与し、編集や削除、設定変更の権限は一切与えないように制御します。権限を最小化しておくことで、AIエージェントが判断を誤った場合や、処理工程でバグが発生した場合でも、重要なデータベースが改ざんされたり、社外秘のデータが勝手に削除されたりする被害を構造的に防ぎます。

【プロセス制御】重要な意思決定に「人間の承認」を挟む

タスクの実行において、「人間の承認(Human-in-the-Loop)」を挟む設計にすることも有効です。具体的には、金銭のやりとりが発生するオーダー、顧客へのメール送信、データの削除といった「重要なアクション」を実行する直前に、必ず人間のレビューと承認を必須とする設計にします。人間が介在して確認することで、「誤ったデータで業務を進める」「社外のデータを外部に送信する」といったリスクを回避します。

【ログの監視】「誰が・何をしたか」の行動履歴を可視化する

AIエージェントが「いつ」「どのデータにアクセスし」「どのような処理を実行したか」というログ(行動履歴)を常に記録・可視化する仕組みも必要です。自律的に動くAIエージェントは、人間の目に見えないバックグラウンドで処理を完結させてしまうため、ログが残っていなければ不正な挙動や意図しないデータ流出が発生しても気づくことができません。

詳細なログをリアルタイムで監視・保管しておくことで、不審な挙動を早期に検知してシステムを一時停止できるほか、万が一インシデントが発生した際にも「どの経路でデータが漏洩したのか」の原因特定と迅速な事後対応が可能になります。

【人的ルール】利用ガイドラインを定めインシデント訓練を実施する

強力なシステム制御を導入する一方で、利用者側のリテラシーを高める「人的ルール」の整備も並行して実施する必要があります。企業として「どのような業務をAIエージェントで取り扱ってよいか」「外部連携時の確認フローはどうあるべきか」を定めた明確な利用ガイドラインを策定し、社内に周知徹底します。

さらに、情報漏洩を想定したインシデント訓練を定期的に行うことで、情報システム担当者や現場の社員が有事の際に迷わずシステムを遮断し、適切な報告ルートを確保できる体制を構築しておくことも重要です。これにより、万が一の事態が発生した際にも組織全体で迅速に対応できる、強固な防御体制が整います。

安全にAIエージェントを運用するためのツール選定基準

市場には多種多様なAIツールやプラットフォームが存在しますが、ビジネスでAIエージェントを安全に運用するためには、セキュリティ要件を満たした製品を選定しなければなりません。ここでは、企業がチェックすべき3つの選定基準を紹介します。

①「オンプレミス」と「クラウド」の比較

自社専用のサーバーにAIエージェントを構築する「オンプレミス構築」は、データを完全に自社内でコントロールできるため、セキュリティ面で有利です。しかし、莫大な初期投資、構築期間、専門知識を持つ人材が必要となるため、その分ハードルが高くなります。

初期費用や運用負荷を最小限に抑え、堅牢なセキュリティ環境を即座に手に入れるなら、データ保護やアクセス制御の仕組みが標準で組み込まれた「安全なクラウド」のサービスを選定するほうが現実的でしょう。

②データの暗号化・DLP(データ損失防止)機能の有無

クラウドサービスを選定する場合、通信時および保管時のデータがすべて強力に暗号化されていることは必須要件です。さらに、入力されたデータがAIモデルの学習に利用されない契約内容(オプトアウト)になっているかを確認する必要があります。

これに加えて、社外秘のデータや個人情報がAIエージェントを介して不用意に外部へ送信されるのを、システム的に検知・遮断するDLP(データ損失防止)機能が備わっているかどうかも重要な基準です。これらのデータ保護機能が標準実装されているツールを選ぶことで、社員の誤操作によるデータ漏洩をシステム側で防ぎます。

③導入後の設定や運用サポートの有無

AIエージェントを導入するにあたり、「セキュリティ設定を自社の担当者だけで完結させるのは難しい」という企業もあるでしょう。アクセス権限の適切な割り当てや、ログの監視ルールの設計など、実務に即した安全な環境を維持するためには、専門知識を持つ外部パートナーのサポート体制が不可欠です。導入時の初期設定や、運用開始後のトラブル対応、定期的な設定見直しなどを支援してくれるベンダーや代理店からツールを導入することが、長期にわたり安全かつ安定した活用につながります。

安全にAIエージェントを構築する「Gemini Enterprise」

Gemini Enterprise とは、Googleが提供するAIエージェント環境構築ツールです。GmailやGoogleドライブなどGoogleのデータソースだけでなく、Microsoft 365やJiraといった外部のシステムとも接続できるため、自社独自のAIエージェントを構築できます。

企業のプライバシーを厳格に守る「3つの基本原則」

大企業の利用を前提として設計されている Gemini Enterpriseでは、企業の最も重要な資産を守るため、以下の基本原則が徹底されています。

  • 入力データがAIモデルの学習に利用されない
  • 入力・出力したデータの所有権は常に企業に帰属する
  • 企業のデータを広告などに2次利用することは一切ない

上記3点は契約によって厳格に守られ、無料のAIツールで懸念されるようなデータ漏洩や二次利用のリスクを完全に排除します。

特有のリスクにも対する高度なセキュリティを網羅

記事の前半で解説したような、AIエージェント特有のリスクに対する高度なセキュリティ機能が網羅されています。具体的には以下のような対策です。

  • Model Armor:AIとのやり取りをリアルタイムで監視し、悪意のある命令や機密情報の不用意な出力を検知・ブロックします
  • VPC-SC:データへのアクセスを特定のネットワーク境界内のみに制限し、不正アクセスやデータの持ち出しを防ぎます
  • CMEK:データの暗号化に使用する鍵を企業自身で管理でき、極めて高い秘匿性を保つことができます
  • ログの監視:「誰が」「いつ」といったログを記録し、使用状況を可視化します

このように、Gemini EnterpriseはAIエージェントを安全に運用するための、高度なセキュリティを備えています。「自社の機密データを守りながら、安全かつ本格的にAIエージェントを活用したい」と考える企業におすすめのプラットフォームです。

▼Gemini Enterpriseの具体的なセキュリティ機能データ保護の仕組みについては、こちらの記事もご覧ください。

AIエージェントならではのリスクを抑えながら業務効率化を!

AIエージェントは、従来のAI以上に企業の生産性を向上させる手段です。その一方で、自律性の高さゆえのリスクも伴います。これからのAI運用においては、社員の意識改革といった「人的ルール」の策定にとどまらず、技術によって危険な動作を未未然に防ぐ「システム制御」の視点も重要です。自社の利用に適したセキュリティ対策を検討して、安全なクラウド基盤の上でAIエージェントを活用してはいかがでしょうか。

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