コラム更新日:2025.07.29

Google Workspace を活用したBCP(事業継続計画)対策 は、現代の企業にとって不可欠な経営戦略の一つです。企業を取り巻くリスクは多様化しており、事業を中断させないための BCP 対策はもはや大企業だけのものではなく、いずれの企業にとっても重要な課題となっています。

この記事は BCP 対策 の観点から、Google Workspace をどのように活用できるのかを解説します。実際に導入した企業の具体例と、BCP を成功に導くポイントも紹介していますので、自社の BCP を検討する際にお役立てください。

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BCP対策として Google Workspace が注目される理由

企業の BCP 対策 として有効なツールに、Google Workspace があります。 近年、自然災害の激甚化、世界的なパンデミック、サイバー攻撃といった予期せぬ事態が多発し、企業に及ぼす影響を予測するのが困難なケースもあります。これらの事態がいつ、どの企業に降りかかるか分かりません。事業が停止してしまえば、売上の機会損失だけでなく、顧客からの信頼を失い、最悪の場合、事業の継続自体が困難になる恐れもあります。

従来の BCP 対策 は、主要な事業資産であるサーバーやデータなどをオフィス内に設置する「オンプレミス型」が主流でした。しかしこの方式は、オフィスが被災すればサーバーが物理的に破損するリスクがあり、保有するデータの損失やアクセス不能に陥る可能性があります。また、従業員が出社できない状況では、オフィス内のシステムにアクセスできず、業務が完全に停止してしまうことも考えられます。

このような課題を解決する手段として、近年注目されているのがクラウドサービスを活用した BCP 対策 です。Google Workspace は、メール、カレンダー、ドキュメント作成、ファイル共有、オンライン会議など、ビジネスに必要な機能をクラウド上で提供しています。 これにより、場所やデバイスに縛られることなく、いつでもどこからでも業務の継続が可能です。自然災害でオフィスが機能しなくなっても、従業員が自宅や別の場所から安全に業務を遂行できれば、事業への影響を最小限に抑えられます。

【具体例】緊急時に Google Workspace はこう機能する!

緊急事態が発生した際、Google Workspace がどのように事業継続に貢献するのか、具体的なシナリオを通して見ていきましょう。これらのシナリオは、中小企業の皆様が直面しうる状況を想定しており、Google Workspace の各機能がどのように役立つかを具体的にイメージしていただけるはずです。

シナリオ1:大規模災害(地震・水害)の発生

大規模な地震や水害が発生し、オフィスが被災したり、交通機関が麻痺して従業員が出社困難になったり、安否が不明になったりする状況は、企業が恐れる事態の一つです。 情報が分断され、通常の業務が滞る中で、いかに迅速に状況を把握し、対策を講じるかが事業継続の鍵となります。

Google Chat・Google フォーム:安否確認・状況の取りまとめ

災害発生直後に最も重要なのは、従業員の安否確認です。Google Chat を使えば、全社や部署ごとに一斉にメッセージを送信できます。既読機能や返信機能により、誰がメッセージを確認したか、どのような状況にあるか、従業員の状況を迅速に把握することが可能です。

さらに、Google フォームを活用することで、より詳細な安否状況や被災状況を効率的に集約できます。事前に作成しておいた安否確認フォームを Google Chat で共有すれば、従業員はスマートフォンなどから簡単に回答でき、その回答はスプレッドシートに自動的に集計されます。これにより、管理者は迅速に従業員の状況を把握し、必要なサポートや指示を出すことができます。

Google Meet:対策本部のオンライン化

災害発生時、経営陣や管理職は迅速に状況を把握し、対策本部を設置して意思決定を行う必要があります。しかし、被災状況によっては物理的に集まることが困難な場合もあるでしょう。Google Meet を活用すれば、オンラインによる対策本部を設置できます。 画面共有機能を使えば、被災状況のマップやアンケートで集計した安否情報など、リアルタイムに情報を共有しながら、議論を進めることが可能です。

Google ドライブ:データ保護とバックアップ、業務遂行

事業を継続するうえで重要な資産の一つが情報データです。オンプレミス型の物理サーバーにデータが保存されている場合、オフィスが被災すればサーバーが破損し、大切なデータが失われるリスクがあります。しかし Google ドライブは、すべてのデータをクラウド上で安全に保護します。

災害によってオフィスが使えなくなっても、従業員は自宅や避難先など、インターネット接続があればどこからでも必要な資料にアクセスし、業務を再開することが可能です。ドキュメントやスプレッドシート、プレゼンテーションなどのファイルをクラウド上で一元管理することで、物理的な破損リスクからデータを保護します。

シナリオ2:パンデミックやサイバー攻撃によるオフィス閉鎖

パンデミックによる全社的な出社停止や、サイバー攻撃による社内サーバーへのアクセス不能は、近年増加しているリスクです。このような状況では、物理的なオフィスが機能しなくなり、紙の書類の確認が不可能になる、共同作業が困難になるなど、通常の業務フローが大きく阻害されます。

Google Workspace はクラウド上にデータを保存するため、オフィスが閉鎖されるような状況下でも必要なデータにアクセス可能で、事業を継続することが可能です。

Google ドキュメントなど:共同編集・コミュニケーションの円滑化

オフィス閉鎖時でも、Google ドキュメント、スプレッドシート、スライドといったツールを活用することで、オフィスと遜色ない環境で業務を継続できます。これらのツールは、複数人が同時にファイルを編集できる共同編集機能を備えています。たとえば、企画書や報告書を複数のメンバーで分担して作成する場合でも、リアルタイムで進捗を確認しながら効率的に作業を進めることが可能です。

コメント機能や Google Chat を活用して、資料の内容について意見交換する、不明点を質問するなど、円滑なコミュニケーションを図ることができます。これにより、リモートワークでも業務の停滞を防ぎ、生産性を維持することが可能です。

Google ドライブ:リモートワーク体制の確立

パンデミックなどによるオフィス閉鎖時には、完全なペーパーレス化が求められます。契約書や請求書、稟議書など、これまで紙で運用していた書類を電子化し、Google ドライブで一元管理することで、押印や書類確認のためだけに出社する必要がなくなります。

クラウド上にすべての書類がデータとして保存されるため、必要な時にいつでもどこからでもアクセスし、確認・承認作業を進めることができます。オフィスに依存しない柔軟なリモートワーク体制を確立し、業務の中断を最小限に抑えることが可能です。

【事例紹介】Google Workspace ×BCP 対策

実際に Google Workspace をBCP対策 に役立てている企業の事例を見ていきましょう。さまざまな業種・規模の企業が Google Workspace を導入しているので、自社の参考にしてみてください。

被災経験を活かし Google Workspace に移行

戸田建設(総合建設業)は、Google Workspace を全社に導入しました。同社はもともと重要データの保管体制について改善を検討していましたが、Google Workspace 導入の大きなきっかけとなったのは、2011 年 3 月に発生した東日本大震災です。 震災による津波で現場事務所が流されて、施工現場は立ち入り禁止に。さらに、既存のメールサーバー移転について不安が生じたこともあり、クラウドサービスである Google Workspace への移行を決定しました。 Google Workspace によって、「インターネットがつながっていればメールが使える」という安心感が生まれました。加えて、メール以外のさまざまなツールも使えることから、事実上のコストダウンにつながっています。

参考:導入事例「戸田建設株式会社」

Google Workspace を「情報インフラ」として活用

潤和リハビリテーション振興財団(潤和会記念病院)では、既存の電子カルテシステムを Google Workspace に移行しました。導入の背景にあるのは、台風で近くの川が氾濫し、1階に設置していたサーバーを避難させる事態となったことです。 緊急時でも医療サービスを提供できる体制の整備と、予定外のメンテナンス費用などコスト面も課題だったことから、クラウド化を決定。比較検討の結果、Google Workspace を導入しました。

Google Chat(旧ハングアウト)を活用した電話に頼らない業務連絡、Google フォームによるアンケート集計作業の効率化、感染症の最新状況をスプレッドシートで迅速に更新するなど、さまざまなツールがコミュニケーションと業務効率の向上につながりました。 また、迷惑メールは自動で排除されるため、フィルタリングにかかっていた費用が不要になるなど、コスト削減も実現しました。

参考:導入事例「潤和リハビリテーション振興財団」

災害・パンデミックに備え、情報共有基盤を刷新

京都府にある社会医療法人岡本病院 (財団)では、災害時に急性病院の機能を維持するために、Google Workspace と rakumo サービスを導入しました。 従来のシステムは、サイバー攻撃などから電子カルテを守るためにインターネットから切り離して運用していたため、院外からアクセスできず、災害時の迅速な安否確認・情報共有の困難さが問題でした。ライセンス費用が高額で一部の職員しか利用できないことも課題でした。

新病院開設に伴うシステム見直しを機に、院内外からのアクセス、多数職員へのアカウント付与、高いセキュリティなどを評価して、Google Workspace 導入を決定。院外からでも必要な情報にアクセスできるようになり、災害時でも迅速な情報共有と連携で、病院の機能を維持することが可能になりました。 また、書類のペーパーレス化によって医師の労務管理にも対応。紙のコスト削減にもつながっています。

参考:Google Workspace と rakumo で 医療DX を先駆け!院内ポータルで情報を1つに。

BCP 対策 におけるセキュリティとデータバックアップの重要性

クラウドサービスの利用を検討する際、多くの企業が「セキュリティ」と「データ消失」への不安を抱くことでしょう。Google Workspace は標準で高度なセキュリティを備えていますが、BCP 対策として万全を期すために、以下の点も理解しておくことが重要です。

標準機能で実現する堅牢なセキュリティ体制

Google Workspace は高度なセキュリティ機能を標準で備えています。2 段階認証プロセスは、パスワードだけでなくスマートフォンなどに送信されるコードを入力することで本人確認を行うため、不正アクセス対策として非常に有効です。また、各ファイルやフォルダに対して、「閲覧のみ」「編集者」「オーナー」といった詳細なアクセス権限を設定できます。これらの機能が機密情報へのアクセスを制限し、情報漏洩のリスクを低減します。

エディションによっては、セキュリティセンターで管理者が組織全体のセキュリティ状況を可視化し、潜在的な脅威を特定できます。具体的には、異常なログイン試行や疑わしいアクティビティを検知するため、迅速な対応が可能です。

「人的ミス・攻撃」に備えるバックアップ

重要なデータの損失に備えるためには、定期的なバックアップが不可欠です。Google のアカウント内部で起こる人的ミスや悪意のある攻撃は、Google Workspace に問題がなくても発生するためです。たとえば、従業員が誤操作で(あるいは故意に)データを削除する、ランサムウェア攻撃によりデータが暗号化されるなどです。このようなリスクに備えるために、データは定期的にバックアップを取っておきましょう。

Google Workspace には、自動でバックアップを取る機能はありません。ゴミ箱に移動したファイルは 30 日間保持されますが、この期間を過ぎると完全に削除され、復元できなくなります。管理者権限の場合でも、ゴミ箱から削除されたファイルを復元できるのは 25 日間のみです。管理者やユーザーがそれぞれエクスポートする、外部のバックアップツールを活用するなど、定期的なバックアップ体制を整備しておきましょう。

BCP を成功に導く導入・運用のポイント

BCP 対策の効果を最大限に引き出すためには、Google Workspace の計画的な導入と運用が不可欠です。ここでは、BCP を成功させるためのポイントを 2 つ紹介します。

1:BCP を目的とした導入計画の立て方

BCP 対策は、Google Workspace のようなツールの導入を検討する段階で、「緊急時に優先して継続すべき業務は何か」を明確に定義しておくことが重要です。製造業であれば生産ラインの維持、医療機関であれば傷病者の治療など、企業の事業特性や規模によって継続すべき業務は異なります。

自社の優先業務を明確にしたうえで、Google Workspace の機能をどのように活用するか、導入範囲をどこまでにするか、そして緊急時の運用ルールをどのように策定するかを具体的に計画しましょう。 全社導入が難しい場合は、まずは一部の部署や業務から段階的に導入を進めることも有効です。従業員への説明会やトレーニングを計画に盛り込み、スムーズな移行を促すことも重要です。

2:「策定して終わり」にしないための定期的な防災訓練

BCP は策定して終わりではなく、定期的な防災訓練を実施することが不可欠です。Google Workspace を活用した訓練を定期的に実施することで、従業員が緊急時にどのようにツールを使い、どのように行動すべきかを身をもって体験することで、計画の形骸化を防ぎます。

たとえば、Google Chat を使った安否確認訓練や、Google Meet を使ったオンライン対策本部設置訓練、Google ドキュメントを使った共同での情報共有訓練などを定期的に実施しましょう。全社一斉のリモートワーク訓練を実施し、実際に自宅や別の場所から業務を継続できるかを確認することも有効です。これらの訓練を通じて、計画の不備や課題を発見し、改善を繰り返すことで、より実効性の高い BCP を構築できます。

Google Workspace なら堅牢かつ柔軟な経営基盤構築が実現可能

Google Workspace は、単なるビジネスツールではありません。自然災害、パンデミック、サイバー攻撃など、あらゆるリスクに備え、企業のレジリエンスを高めるための、強固で柔軟な経営基盤を構築できます。

クラウド上にデータとシステムを集約することで、オフィスに縛られない働き方を実現し、緊急時にも事業を継続できる体制を確立します。高度なセキュリティ機能と、必要に応じて追加できるバックアップソリューションを組み合わせることで、データの安全性も確保されます。もし、貴社が BCP 対策としてクラウドサービス導入を計画されているのであれば、Google Workspace を強力な選択肢としてご検討ください。

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