メールのクラウド化とは?メリット・デメリット、メールサーバー選定時のポイントを解説

コラム更新日:2025.08.04

現代のビジネスにおいて、メールは企業活動の根幹をなす重要なコミュニケーションツールの一つです。しかし、オンプレミス型のメールシステムでは、運用コストやセキュリティリスク、BCP 対策といった多くの課題に直面する企業も少なくありません。そこで注目されているのが、メールシステムのクラウド化です。

本記事では、クラウドサービスの概要やメールシステムのクラウド化が企業にもたらすメリット・デメリット、最適なメールサーバーを選ぶためのポイントなどをわかりやすく解説します。企業の導入事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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執筆・監修:TSクラウド編集部

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クラウドサービスとは?主要サービスと普及状況

クラウドサービスとは、インターネット経由で必要な時に必要な分だけ IT リソース(サーバー、ストレージ、ソフトウェアなど)を利用できるサービス形態のことです。自社で物理的な設備を持つ必要がないため、初期投資を抑え、運用負担を大幅に軽減できる点が大きな特徴です。

企業の IT インフラにおいて、クラウドサービスの導入はもはや避けられない潮流となっています。特にメールシステムはビジネスコミュニケーションの要であり、クラウド化によって多くのメリットを享受できます。本章では、代表的なクラウドサービスと、その普及状況について解説します。

代表的なクラウドサービス

クラウドサービスには、提供される内容に応じて大きく3つの種類があります。1つ目がソフトウェアを実行するための仮想サーバーやストレージ、ネットワークなどといった基盤を提供するサービス「IaaS」、2つ目がソフトウェアを実行するためのプラットフォームを提供するサービス「PaaS」、そしてソフトウェアそのものをクラウドサービスとして提供する「SaaS」です。SaaSの代表的な例としては、Google Workspace、Microsoft 365、Salesforce、Slack などが挙げられます。これらは、インターネットに接続すれば、どこからでもすぐに利用できるアプリケーションです。

企業のクラウドサービス導入状況

総務省が公開している「令和 6 年通信利用動向調査」の結果によると、企業の 8 割以上が何らかのクラウドサービスを利用しているという現状が示されています。この数字は年々増加傾向にあり、クラウド化が特定の業種や規模に限らず、一般的な経営戦略として浸透していることを示唆しています。特にクラウドサービスの主要な利用用途としては、「ファイル保管・データ共有」「社内情報共有・ポータル」「電子メール」が挙げられており、メールシステムのクラウド化がいかに多くの企業で進んでいるかがわかります。

参考:総務省「令和6年通信利用動向調査の結果」

メールのクラウド化で期待できるメリット

メールシステムをクラウド化することで、企業は多岐にわたるメリットを享受し、ビジネス全体の効率と競争力を高めることにつながります。オンプレミス型メールシステムと比較し、クラウドメールがどのような利点をもたらすのかを具体的に見ていきましょう。

運用コストの削減

クラウドメールを導入することで、運用コストを大幅に削減できるのが大きなメリットです。オンプレミス環境で必要だったサーバー機器の購入費用や設置スペース、電力費用、システムの保守・運用にかかる人件費などが不要となります。サービス利用料のみで済み、初期投資を抑えられるため、IT 予算の効率的な活用が可能です。

運用管理の効率化

クラウドサービスプロバイダーがシステムのメンテナンスやセキュリティ対策、アップデートなどを自動で行うため、社内 IT 担当者の運用負荷が劇的に軽減されます。これにより、IT 担当者はメールサーバーの管理から解放され、より戦略的な業務や企業の DX 推進といった本質的な業務に集中できるようになるでしょう。

セキュリティの強化

クラウドサービスプロバイダーは、サイバー攻撃からシステムを守るための最新のセキュリティ技術と専門家による管理体制を構築しています。これにより、自社で構築・運用するよりも高度なセキュリティレベルを維持することが可能です。多要素認証、データ暗号化、迷惑メール対策、情報漏洩対策などが提供され、企業の重要な情報は強力に保護されます。

生産性の向上とコラボレーションの促進

どこからでもアクセスできるクラウドメールは、リモートワークや多拠点での協業を強力にサポートし、生産性向上とコラボレーション促進に貢献します。大容量のファイルを共有したり、リアルタイムで共同編集したりできる機能は、チーム全体の生産性を向上させるでしょう。たとえば、Google Workspace の Gmail と Google ドライブの連携のように、メールから直接共同作業に移行できるため、情報共有がスムーズになります。

スケーラビリティの確保

クラウドメールは、スケーラビリティの高さも魅力です。企業の成長に伴う従業員数の増減や、ストレージ容量の拡大にも柔軟に対応できます。必要なリソースを必要な時にすぐに確保できるため、ビジネスの変化に迅速に適応でき、将来の拡張性についての心配も軽減されるでしょう。

メールのクラウド化で直面する課題

メールシステムのクラウド化は多くのメリットをもたらしますが、同時にいくつかの課題も存在します。これらの課題を事前に理解し、適切な対策を講じられるよう、主な懸念点を確認しておきましょう。

データ移行の複雑さ

長年蓄積された大量のメールデータや添付ファイルを、既存システムから新しいクラウド環境へ安全かつ正確に移行することは、専門知識と時間が必要な作業となります。特に、過去のメールデータをすべて引き継ぎたい場合、そのプロセスはより複雑になる傾向があります。

従業員の慣れとトレーニング

新しいメールシステムに切り替えることは、日々の業務に大きな影響を与えます。インターフェースや操作方法が変わることで、従業員が戸惑い、業務効率が一時的に低下する可能性があります。スムーズな移行のためには、十分なトレーニングとサポート体制が不可欠です。

既存システムとの連携

既存の基幹系情報システムや顧客管理システムなど、オンプレミスで稼働している他のシステムとの連携がスムーズに行えるかどうかも重要な検討事項です。連携が不足していると、業務プロセスが分断され、かえって非効率になる可能性もあります。

費用対効果の見極め

クラウドメールは月額課金制が一般的です。初期費用だけでなく、長期的な運用コストや、それによって得られる生産性向上などのメリットを総合的に評価する必要があるでしょう。短期的な視点だけでなく、中長期的な視点でのコスト削減効果や投資対効果を正確に算出することが求められます。

特定のサービスへの依存リスク

特定のクラウドプロバイダーに依存しすぎると、将来的に他のサービスへの移行が困難になったり、コストが増加したりする可能性があります。そのため、サービスの柔軟性や移行の容易さも事前に確認しておくことが重要です。

自社に最適なメールサーバーを選ぶためのポイント

メールシステムのクラウド化を成功させるには、自社のニーズに合った最適なメールサーバーを選ぶことが不可欠です。本章では、具体的な検討ポイントを紹介します。

機能性

メール機能だけでなく、カレンダー、チャット、ファイル共有、ビデオ会議など、業務に必要な機能が統合されているかを確認しましょう。特に、大容量ファイルの共有機能やプロジェクト管理に役立つ連携機能は、現代のビジネスにおいて非常に重要です。

セキュリティとコンプライアンス

企業の機密情報を保護するためには、情報漏洩対策、多要素認証、監査ログ、迷惑メール対策といったセキュリティ機能が充実しているかを確認する必要があります。加えて、業界特有のコンプライアンス要件を満たしているかどうかも重要な検討ポイントです。堅牢なセキュリティ体制を持つプロバイダーを選ぶことで、安心してサービスを利用できます。

費用対効果

月額料金だけでなく、初期費用、データ移行費用、導入後の運用管理にかかる人件費なども含めて、トータルなコストを算出することが大切です。また、クラウド化によって得られる生産性向上やコスト削減効果を具体的な数値で予測し、長期的な視点での投資収益率(ROI)を見極めることが成功の鍵となります。

拡張性と柔軟性

企業の成長に伴う従業員数の増減やストレージ容量の拡大において、アカウント数やストレージを柔軟に増減できるかを確認しましょう。必要なリソースを必要な時にすぐに確保できるスケーラビリティは、将来的なビジネス成長にスムーズに対応できるかどうかの判断材料になります。

サポート体制

導入時や運用中に問題が発生した場合、迅速かつ適切なサポートを受けられる体制が整っているかを確認しましょう。特に日本語でのサポートや、自社の業界に特化した知識を持つベンダーの有無も検討ポイントとなります。手厚いサポートがあれば、トラブル時も安心して対応できるでしょう。

既存システムとのスムーズな連携

API 連携の可否や連携実績の有無は、業務プロセスの効率性を維持・向上させる上で不可欠です。現在利用している基幹システムや他のクラウドサービスとの連携がスムーズに行えるかを確認しましょう。複数のシステムを統合的に運用できるサービスを選ぶことが、全体の効率化につながります。

【企業事例】メールをクラウド化した企業の導入効果

実際にクラウドメールを導入した企業は、どのような変化を遂げているのでしょうか。ここでは、Google Workspace の導入事例を通じて、クラウドメールがもたらす具体的な効果をご紹介します。

横浜ゴム株式会社:メールとデータ管理のクラウド化で業務効率を向上

創立 100 年を超えるタイヤ・ゴムメーカーの横浜ゴム株式会社は、2014 年に Google Workspace を導入し、メール容量制限や検索の遅さといった課題を Gmail で解決しました。2017 年には Google Workspace の全面活用により、 Gmail と Google ドライブを拡大利用。これにより、共同編集が容易になり、業務効率が大幅に向上しました。クラウド化により、柔軟な働き方を実現しています。

参考:Google Workspace 導入事例「横浜ゴム株式会社」

株式会社リビングステージ:レガシー環境をクラウドへ移行し、全社的な業務効率を改善

主に不動産管理会社を顧客として物件のリフォーム業を行う株式会社リビングステージは、2022 年に Gmail の活用や業務の効率化を目的として Google Workspace を導入。レガシーなメール環境とファイルサーバーのクラウド化を実現しました。Gmail への完全移行により、どの端末からでもリアルタイムでメールの送受信が可能となり、利便性が向上。Google ドライブでデータ共有・管理を効率化し、クラウドサービス導入が全社的な業務効率の大幅な改善に貢献しました。

参考:メール環境とファイルサーバーをクラウド化。レガシーな業務環境からの脱却に成功

なお、Google Workspace のビジネス用 Gmail と個人向け Gmail にはどのような違いがあるのかについては、弊社コラムで詳しく解説しています。併せてご覧ください。

参考:Google Workspace のビジネス用Gmail と個人向けGmail の違い

メールのクラウド化には Google Workspace がおすすめ

現代のビジネスにおいて柔軟性と拡張性を持つクラウドメールは、もはや単なる IT ツールではなく、企業が持続的に成長していくために不可欠なインフラとなっています。メールのクラウド化は、業務効率の向上、コスト削減、セキュリティ強化だけでなく、社員の働き方改革やイノベーションを促進する基盤ともなり得ます。

Google Workspace は、メールシステムのクラウド化において非常に有力な選択肢です。Gmail の信頼性と Google ドライブの安全安心なファイル共有機能に加え、オンライン会議や共同編集ツールがシームレスに連携。強固なセキュリティと高い可用性、直感的な操作性でクラウド化の課題を解決し、企業の生産性向上と業務革新を強力に支援します。

本記事で紹介したメールのクラウド化で期待できるメリットや自社に合ったメールサーバーの選び方などを参考に、最適なメールサーバーを選定し、業務革新の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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