【事例を参考】製造業の DX とは?実際の効果や課題解決の方法を解説
コラム更新日:2025.08.06
コスト高や人手不足など、製造業の多くの企業で深刻な課題に直面しています。これらの課題を解決しながら、企業の成長を促進するために重要となるのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。しかし、「どのようにして DX を成功させるのか?」「大規模な設備投資は難しい」などと感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、製造業における DX の基礎知識も交えながら、実際の企業事例を参考に各企業の施策のポイントを解説します。中小企業の課題解決の方法や、施策のアイデアも満載ですので、ぜひ参考にしてください。
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執筆・監修:TSクラウド編集部
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製造業の DX とは?効率化だけではない本質的メリット
製造業における DX とは、IoT や AI、クラウドなどのデジタル技術も活用して、開発・製造・販売といった一連のプロセスや組織のあり方を変革することを意味します。DX の本質的なメリットについてみていきましょう。
➤DX では新たな価値の創出が重要
経済産業省は、DX について以下のように説明しています。
(引用:経済産業省『中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025 (DXセレクション2025選定企業レポート)』
つまり、紙からデジタルへの移行など、現在の事業をより効率的に進めるための取り組みだけでなく、DX によって新たな価値創出を目指す戦略と両輪で進めることが重要だといえるでしょう。
➤製造業における DX のメリット
製造業が DX を推進することで、単なる業務効率化に留まらない、多くのメリットが期待できます。
生産性の向上と品質の安定化
IoT センサーで収集したデータを AI で分析すれば、生産ラインの稼働状況を最適化したり、不良品発生の予兆を検知したりすることも可能です。ムダをなくし、安定した高品質な生産体制を構築できます。
人手不足と技術継承の課題解決
熟練技術者のノウハウを、動画マニュアルやデジタルデータとして蓄積・共有することで、若手人材の育成を効率化。属人化しがちな技術を、「組織の資産」として継承できます。
企業競争力の向上
収集したデータを活用することで、市場のニーズを的確に捉えた製品開発が可能です。製品とサービスを組み合わせた新たなビジネスモデルの創出など、DX の本質的なメリットにつなげることができるでしょう。企業の競争力を根本から高めることができます。
【事例を参考】製造業における DX の取り組み例
ここからは、実際に製造業の企業が DX によってどのような課題を解決し、成果を上げているのか、具体的な施策例をご紹介します。中小企業がスモールスタートで始めた DX 施策も紹介していますので、取り組みのヒントとしてお役立てください。
➤DX 施策例1|自社独自の「見える化」がサービスに。体質改善がきっかけで生まれた新事業
<企業情報>
- 事業所在地:愛知県
- 業種:自動車部品の製造
- 従業員数:約440名
・経営改善を図るも、データがなく客観的に判断できない状態
愛知県の自動車部品メーカーでは、国内市場の縮小に加えて、長年の赤字体質が課題となっていました。「売上に頼らずとも利益を確保できる体制」への転換が急務である一方、勘と経験に頼る経営が続き、どこから手をつけるべきかデータで客観的に判断できないという大きな課題を抱えていました。
・低コストで「見える化」する取り組み
この課題に対し、同社は安価な市販センサーなどを活用し、工場の設備稼働や電力消費をリアルタイムで把握できる独自の IoT ツールを自社開発。また、工場の全電力消費量を直接計測する方式だと電力計が各装置に必要ですが、工場内の全消費電力量をモデル化した計算式で算出することで電力計の費用を抑えるなど、低コストで「見える化」を実現しています。
・電力消費量を22%削減、年間で4億円もの労務費削減
この「見える化」によって、データに基づいた具体的な改善活動ができるようになりました。結果的に電力消費量を22%削減し、年間で4億円もの労務費削減を達成。長年の課題だった利益体質への転換に成功しました。さらに、この成功ノウハウと自社開発したシステムを製品化し、新事業もスタートさせています。
➤DX 施策例2|紙も残しながらクラウドで管理する仕組みを実現
<企業情報>
- 事業所在地:大阪府
- 業種:金属加工など
- 従業員数:約25名
・熟練の職人や事務員の勘と経験に頼る「属人化」
金属加工などを手掛ける、こちらの企業では、アナログな業務のやり方が課題となっていました。。例えば、業務は紙の図面を中心に管理され、全体の仕事量や各案件の納期も、担当者にしかわからない状態でした。
・現場は「紙」のまま、情報は「クラウド」へ
多くの中小企業の現場では、今も紙の図面が仕事の中心です。そこでこの企業は、無理にペーパーレス化するのではなく、紙を活かす「デジアナ融合」に着手。使い慣れた紙図面にバーコードを付けて製品とともに現場で運用し、納期や工程は Excel で入力しクラウドで管理しました。これにより、現場の運用を変えることなく進捗管理をデジタル化。事務所の PC から図番を検索するだけで状況がわかり、探す時間が大幅に削減されました。
・納期達成率が大幅に改善。自社のノウハウを活かしたシステムの外販も
納期がすぐにわかるようになり、仕事の順番の適正化が図れたことで、納期達成率が30%台から80%台へ改善。顧客からも「仕事が出しやすくなった」と評価され、結果として売上200%アップにつながりました。自社の生産管理のノウハウを活かしたシステムの外販も行っています。
➤DX 施策例3|暗黙知だった職人技をデータベース化。誰でも情報活用できる環境を構築
<企業情報>
- 事業所在地:石川県
- 業種:溶接構造部品などの製造
- 従業員数:約35名
・進まぬ技術伝承と非効率な紙・電話連絡。職人頼みの現場が抱える二つの課題
溶接構造部品などの製造を手掛けるこちらの企業では、多品種少量生産に対応するため経験豊富な職人が不可欠な一方、新入社員の多くが未経験者。職人の技術やノウハウの伝承が課題でした。また、作業指示を紙の指示書や電話、メールで行っていたため、伝達ミスや二重発注、手作業での変更による作業効率の悪化といった問題も発生していました。
・職人技を製品別にデータベース化。タブレットと大型ディスプレイで共有
受注・生産管理システムを構築し、受注情報や工程、不具合情報などをリアルタイムで共有できる仕組みを整えました。さらに、職人の技術やノウハウを「トラの巻」としてデータベース化。作業者が見やすいよう、情報を自動でポップアップさせる機能のほか、大型ディスプレイやタブレット活用も推進しました。
・年間15,000枚の紙をゼロに。誰でも職人技を再現できる環境を実現
情報共有の環境が整ったことにより、リピート製作時に過去の不具合情報を自動抽出して、再発の防止ができるようになりました。年間15,000枚使用していた紙をゼロにし、受注情報の変更時にもタブレットからどこでもすぐに確認が可能に。蓄積されたデータベースにより、誰でも職人のように作業ができるようになりました。
参考:独立行政法人情報処理推進機構『中小規模製造業の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査 報告書 Ver.2』
参考:経済産業省『中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025(DXセレクション2025選定企業レポート)』
製造業 DX の基盤となる主要テクノロジー
事例でも登場した、製造業 DX の基盤となるテクノロジーについて紹介します。
➤DX の基盤となるテクノロジー
まずは、多くの DX 施策の根幹を支える技術です。これらを相互に連携することで、さらに画期的な施策へとつなげられます。
・IoT(Internet of Things)
工場の機械や設備にセンサーを取り付けてインターネットに接続し、稼働データや環境データを収集する「現場を見える化」するための技術です。
・クラウド
クラウドとは、インターネット経由でサーバー、ストレージ、アプリケーションといったコンピューター資源を、サービスとして利用する形態のことです。
単なるインターネット上の「情報保管庫」に留まらず、データ処理を行うサーバーや各種ソフトウェアもサービスとして利用できます。これにより、自社で高価な設備を持つことなく、収集したデータを安全に保管・分析し、場所を問わず活用することが可能になります。
➤【注目トレンド】DX を次のステージへ導く新技術
近年では DX をさらに加速・進化させる新たなトレンドが登場しています。
・AI(人工知能)
AI(人工知能)は、製造業のさまざまな工程で生産性や品質の向上に貢献しています。例えば、需要予測による在庫の最適化や、設備の故障予知。ほかにも、画像や音声を認識して、製品の外観検査の自動化や、ロボットが最適な動作を行うためにも不可欠です。さらに近年では、設計データや技術マニュアルなどを自動で創り出す「生成 AI 」も登場。設計開発の高速化や、熟練ノウハウの技術継承といった分野での活用が期待されています。
・デジタルツイン
デジタルツインとは、現実世界の工場や設備を、IoT で収集したデータに基づきデジタル空間へリアルタイムに再現する技術です。デジタル空間上で、コストやリスクなしに、生産ラインの改善や故障の予兆検知といった高度なシミュレーションを行えるのがメリット。生産性向上や予知保全につなげられます。分析結果を現実世界へフィードバックできる双方向性が、従来のシミュレーションとの大きな違いです。
製造業 DX に向けた「コラボレーション基盤」となる Google Workspace
前述のテクノロジー導入とあわせて検討したいのが、従業員間の情報共有やコミュニケーションを円滑にする「コラボレーション基盤」です。その有力な選択肢となるのが「Google Workspace」です。
Google Workspace は、クラウドストレージの Google ドライブ、文書を作成できる Google ドキュメント、表計算ツールの Google スプレッドシートなど、あらゆるツールを備えています。。 Google Meet でのWeb会議も可能です。
初期投資を抑えながら、ペーパーレス化、情報共有の迅速化、拠点間コミュニケーションの活性化といった、DX に必要な土壌づくりをすぐにでも始められます。例えば、Google スプレッドシートを活用し、サプライヤーと生産計画や在庫状況をリアルタイムで共有するのも有効なアイデアの一つ。それぞれの課題や事業にあわせて、自在に活用の幅を広げられるのも Google Workspace の強みです。
DX 成功のカギは「現場のテクノロジー」と「全社の情報基盤」の連携
単にデジタル技術やツールを導入すること自体ではなく、企業経営の変革そのものを目指す DX 。製造業の DX を成功させる上では、IoT や AI といった「現場のテクノロジー」と、 Google Workspace のような「コラボレーション基盤」をいかに連携させるかもポイントです。
現場のセンサーがどれだけ有益なデータを集めても、そのデータが特定の部門や担当者の中に留まっていては意味がありません。収集したデータをクラウドの情報基盤に乗せ、誰もが必要なときにアクセスし、部門を横断して活用できる状態を作ることで、データは価値を生むのです。
Google Workspace にご興味のある方は、以下の資料で導入事例などをご覧になってみてはいかがでしょうか。