【中小製造業向け】IT 担当者のための SaaS 導入ガイド|最適なツールの選び方
コラム更新日:2025.07.31
インターネットを通じてソフトウェアの機能を利用できるサービスを SaaS といいます。SaaS の導入は、変化の激しい現代において、IT 人材の不足や業務の非効率性といった多くの課題を解決する有効な手段となり得ます。しかし、いざ SaaS の導入により自社の課題を解決しようと思っても、「何から手をつければよいかわからない」という悩みを抱えている IT 担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、導入のメリット・デメリット、自社の課題に合わせた SaaS の選び方、ビジネスの基盤構築に役立つ SaaS である Google Workspace を活用した具体的な改善事例などをわかりやすく解説します。中小製造業で IT 担当を兼務している方や、IT リテラシーに自信がないけれど業務改善を進めたいと考えている方に必見の内容です。
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執筆・監修:TSクラウド編集部
Google Workspace 正規代理店のうち、最も高いランクのプレミア資格を持っています。業界歴 17 年、延べ 3,500 社以上へのサービス提供で培った知識と経験を活かし、Google Workspace の情報を発信しています。
SaaS とは
SaaS とは、「サービスとしてのソフトウェア」を意味する言葉 Software as a Service の略称で、インターネットを通じてソフトウェアの機能を利用できるクラウドサービスを指します。
従来の買い切り型ソフトウェアや自社でサーバーを構築・運用するオンプレミス型とは異なり、利用者はインターネット環境さえあれば、どこからでもサービスにアクセスできます。ソフトウェアのインストールやアップデート、サーバーの保守管理といった手間が不要なため、IT 専任者がいない中小企業でも手軽に導入できるのが大きな特徴です。
➤製造業で SaaS が注目されている理由
近年の急速なデジタル化の進展に伴い、製造業も DX 推進の必要性に迫られていることでしょう。しかし、多くの製造業、特に中小企業では IT 人材の不足が深刻な課題となっています。SaaS は専門知識がなくても導入・運用しやすいことから、人材不足を補完する有効な手段として注目されているのです。
また、働き方の多様化も SaaS の普及を後押ししています。リモートワークやハイブリッドワークが一般的になってきている現在、場所を選ばずに情報にアクセスし、円滑にコミュニケーションを取れる SaaS は、柔軟な働き方を実現する上で不可欠です。
中小企業が大企業のような大規模な IT 投資を行うのは難しいですが、SaaS は初期費用を抑えつつ、必要な機能を備えたサービスを選んでスモールスタートできるため、IT 化へのハードルを大きく下げているともいえるでしょう。このように、SaaS は現代の製造業が抱えるさまざまな課題を解決し、競争力を高めるための強力なツールとして期待されています。
製造業が SaaS を導入するメリット・デメリット
SaaS の導入は、中小製造業に多くのメリットをもたらしますが、同時に注意すべきデメリットも存在します。ここでは、それぞれの側面を詳しく見ていきましょう。
➤SaaS 導入で得られる 6 つのメリット
SaaS を導入することで、中小製造業は以下のようなメリットが期待できます。
初期費用と運用コストを抑えられる
従来のオンプレミス型システムでは、サーバー機器の購入やネットワーク構築に高額な初期投資が必要でした。SaaS はクラウド上で提供されるため、こうした初期費用が大幅に削減できます。多くの場合、月額や年額の利用料を支払うサブスクリプション形式のため、予算計画も立てやすく、費用対効果を評価しやすいのもメリットです。
導入までのスピードが速い
SaaS はすでに完成されたサービスとして提供されるため、契約後すぐに利用を開始できるケースがほとんどです。システムの設計や開発、テストといった工程が不要なため、数日から数週間といった短期間で導入が完了し、迅速に業務改善に着手できます。
IT 管理者の負担が大幅に軽減される
中小製造業では、専門の IT 担当者がいない、あるいは他の業務と兼務している場合が多いでしょう。SaaS の場合、システムの保守・運用、セキュリティ対策、バージョンアップなどはすべて SaaS 提供元が行います。そのため、IT 管理者は本来の業務に集中でき、システム運用に関する専門知識がなくても安心して利用できます。
人手不足問題の解決に貢献
製造業全体で人手不足が深刻化する中、SaaS は業務効率化や自動化を通じてこの問題に対応できます。たとえば、定型的なデータ入力や書類作成、情報共有などを SaaS で自動化・効率化することで、少ない人数でも多くの業務をこなせるようになるでしょう。また、IT 人材の確保が難しい中小企業でも、SaaS を活用すれば高度なシステムを手軽に利用できるようになり、業務の属人化を防ぎながら生産性の向上が期待できます。
場所を選ばずに利用できる
SaaS はインターネット環境があれば、オフィスや工場、出張先、自宅など、どこからでもアクセスできます。現場とオフィスの情報連携がスムーズになり、リモートワークやハイブリッドワークなど柔軟な働き方にも対応できる点がメリットです。また、生産進捗のリアルタイム確認や遠隔地からのデータアクセスにより、業務の自由度も向上するでしょう。
常に最新の機能とセキュリティ
SaaS は提供元によって常に機能が改善され、最新の状態に保たれる点もメリットです。セキュリティ対策も同様で、サイバー攻撃の手法が高度化する中でも、SaaS 提供元が専門的な知見と技術でセキュリティを強化し続けてくれるため、利用者は常に強固なセキュリティ環境でサービスを利用できます。
➤押さえておきたい SaaS のデメリットと対策
SaaS 導入には多くのメリットがある一方、注意すべきデメリットもあります。これらを事前に理解し、適切な対策を講じることが重要です。
カスタマイズの自由度が低い
SaaS は多くの企業の利用を前提とした汎用的なサービスであるため、自社独自の複雑な業務プロセスや、既存システムとの特殊な連携要件に完全にフィットしない場合があります。そのため、導入前に自社の業務プロセスを詳細に洗い出し、SaaS に合わせて業務を見直せる部分がないか検討しましょう。また、アドオン機能や API 連携によって不足機能を補える SaaS を選ぶ、または連携可能な他のサービスを検討することも有効です。
ランニングコストがかかる
初期費用が抑えられる SaaS ですが、月額や年額の利用料が発生するため、長期的にみるとコストがかさむ場合もあります。特に利用ユーザー数やデータ容量に応じて料金が増える場合、計画以上のコストになる可能性も考えられます。そのため、不要な機能やユーザー数のプランを契約しないなど、自社に最適な料金プランを選択することが重要です。自社に適しているかを見極めるためにも、導入前に長期的な利用における総コストを試算しましょう。
インターネット環境に依存する
SaaS はインターネット接続を前提としているため、通信環境が不安定な場所では利用できない、あるいは通信障害が発生した際に業務が停止するリスクがあります。製造現場では安定したネットワーク環境の確保が不可欠のため、SaaS 導入を機に、社内のインターネット回線や Wi-Fi 環境を見直しましょう。万が一の通信障害に備え、オフラインでも一部機能が利用できる SaaS や、緊急時の代替手段を検討しておくのも重要です。
中小製造業が知るべき SaaS の種類
製造業向けの SaaS は多岐にわたりますが、例えば、「生産管理」「グループウェア」「勤怠管理」「RPA/業務自動化」の4つのカテゴリーが挙げられます。主な SaaS の種類とその役割を表にまとめました。
| SaaSの種類 | 特徴 | 役割例 |
|---|---|---|
| 生産管理 |
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| グループウェア |
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| 勤怠管理 |
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| RPA/業務自動化 |
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上記以外にも、顧客管理(CRM)、営業支援(SFA)、経費精算など、さまざまな業務に特化した SaaS があります。自社の課題に合わせて検討するとよいでしょう。
自社の課題に合わせた SaaS の選び方
数ある SaaS の中から自社に最適なものを選ぶ際に、押さえておきたい選び方のポイントを5つ紹介します。
➤解決したい「課題」を明確にする
最も重要なポイントは、SaaS 導入の目的を明確にすることです。「何となく便利そう」で導入すると、結局使われずに終わる可能性があります。現在の業務で何が非効率なのか、どのような課題を解決したいのかを具体的に洗い出すことから始めましょう。
➤IT リテラシーの低い社員でも「使いやすいか」
SaaS の導入効果を最大化するためには、実際に利用する従業員がストレスなく使えるかどうかが重要です。直感的な操作性、シンプルなユーザーインターフェースを持つ SaaS を選びましょう。
➤「費用対効果」を冷静に見極める
導入にかかる初期費用、月額費用だけでなく、SaaS 導入によってどれだけのコスト削減や生産性向上効果が見込めるかを具体的に試算しましょう。単に安価なものを選ぶのではなく、長期的な視点で投資対効果を評価することが大切です。
➤「サポート体制」は万全か
SaaS 導入後も、操作方法の疑問やトラブルが発生する可能性があります。導入前後のコンサルティング、導入支援、ヘルプデスク、トラブル時の対応速度など、提供元のサポート体制が充実しているかを確認しましょう。特に IT 担当者が少ない企業にとっては、手厚いサポートが受けられるかは重要な判断基準になります。
➤「セキュリティ」は信頼できるか
企業の重要なデータを扱う SaaS において、セキュリティは最も重視すべきポイントの一つです。データ保護の方法、アクセス権限管理、プライバシーポリシー、過去のセキュリティ事故の有無などを確認し、信頼できる SaaS を選びましょう。国際的なセキュリティ認証を取得しているかどうかも判断材料になります。
中小製造業の IT 課題解決に役立つ!Google Workspace の可能性
さまざまな SaaS がある中で、Google Workspace は中小製造業で起こり得る、「情報共有」「コミュニケーション」「データ管理」「IT 管理者の負担」といった幅広い課題を解決できる可能性を秘めています。生産管理システムのような「攻め」の SaaS 導入の前に、まずは Google Workspace で業務の「土台」を固めることが、IT 化成功への近道になるでしょう。ここでは、中小製造業の IT 課題解決に役立つ Google Workspace の機能を紹介します。
➤Google ドライブで情報共有を改善
「必要な情報を見つけにくい」という課題を解決するのが Google ドライブです。図面や仕様書、作業手順書、品質データなど社内のあらゆるファイルをクラウド上で一元管理できます。どこからでもアクセスできるため、探し物の時間が大幅に削減されます。また、Google ドキュメントや Google スプレッドシートなどと連携し、複数人で同じファイルを同時に編集可能です。「最新版がどれかわからない」という問題を解消し、常に正確な情報に基づいた業務を行えます。
➤Gmail、Google Meet、Google チャットでコミュニケーションを円滑化
「現場とオフィスの連携不足」といったコミュニケーションの課題は、Gmail、Google Meet、Google チャットで解消できます。Gmail は、大容量のストレージと強力なスパムフィルターで、煩雑なメール業務を効率化します。また、Google Meet はワンクリックでビデオ会議を開始でき、遠隔地の工場や出張先からでも顔を見ながら打ち合わせが可能です。移動の手間や時間を削減し、会議の効率を向上します。Google チャットはリアルタイムな情報共有に適しているため、問題発生時の状況把握や対応の迅速化につながるでしょう。
➤Google スプレッドシートでデータ管理を効率化
属人化や非効率なデータ管理の課題には、Google スプレッドシートが有効です。各工程の進捗や生産実績、在庫データを Google スプレッドシートに入力・集計することで、リアルタイムでの「見える化」を実現します。また、複数人で同時に編集できるため、データ入力作業の負担を分散できるのもメリットです。コメント機能や変更履歴も活用でき、コミュニケーションを取りながら正確なデータを作成できます。
➤安心のセキュリティとシンプルな運用で IT 担当者の負担を軽減
Google は世界最高水準のセキュリティ対策を施したインフラを提供しています。多層防御や 2 段階認証、デバイス管理、監査ログ機能などにより、中小企業では自社で構築が難しい高度なセキュリティ対策が実現できます。Google Workspace はアップデートやメンテナンスが自動で行われるため、常に最新の機能とセキュリティが保たれます。IT 担当者はシステム運用に手間を取られず、本来の業務に集中できるでしょう。
関連記事:Google Workspace で製造業の課題を解決!DX を加速する IT基盤 の構築
自社に合った SaaS 導入で業務課題を改善しよう
SaaS 導入を成功させる秘訣は、日々の業務に潜む課題から着実に解決していくことです。しかし、情報共有、コミュニケーション、データ管理といった課題をそれぞれ個別のツールで解決しようとすると、かえって情報が分散し、非効率になることも少なくありません。
だからこそ、IT化を目指す上で土台となる業務基盤ツールの導入は、SaaS 導入の最適な第一歩となります。
Google Workspace は、まさに業務基盤を構築するための強力なソリューションです。土台から固めることで、将来的に生産管理や会計などの専門的な SaaS を追加導入する際にも、アカウント管理の統一やスムーズなデータ連携が可能になり、活用の幅が格段に広がることでしょう。
まず IT化の土台を作り、専門的な業務改善へとつなげるために、今回の記事で紹介した SaaS の種類や選び方を参考にして、自社に合った SaaS 導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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