コラム更新日:2025.11.12

企業活動に不可欠なファイルサーバー。リモートワークの普及やサイバー攻撃の高度化により、 オンプレミス型NASの限界を感じている企業も多いのではないでしょうか。特に老朽化したNASは、 データ消失のリスク、セキュリティ対策の煩雑さ、運用コストの増加といった多くの課題を抱えています。

本記事は、これらのNASが抱える課題を解消し、 Google Workspace へのスムーズな移行を支援する完全ガイドです。老朽化の兆候を見逃さず適切に対応することで、企業のデータ資産を保護。さらに業務効率を向上させる具体的な手順とポイントを解説します。

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執筆・監修:TSクラウド編集部

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NAS の老朽化によるリスクと Google Workspace が提供する解決策

NAS( Network Attached Storage )は、手軽なファイル共有を実現する便利なツールである一方、その性質上、老朽化によるさまざまなリスクを内包しています。これらのリスクを放置することは、企業の存続にも関わる重大なインシデントにつながりかねません。ここでは、老朽化が進行した NAS が抱える具体的なリスクと Google Workspace による解決策を解説していきます。

老朽化したNASが抱える3大リスク

NAS の老朽化とは単に動作が遅くなることだけでなく、 ハードウェアの寿命、セキュリティの陳腐化、そして運用コストの増加という複合的な問題を引き起こします。これらのリスクは、データ管理の根幹を揺るがすものばかりです。

リスク①物理的故障によるデータ消失リスク

NAS は精密機器であり、特に中核となる HDD の寿命は一般的に 3 〜 5 年程度とされています。老朽化が進むと突発的な物理的故障によるデータ消失リスクが大幅に高まります。これは、企業の事業継続を脅かす最大のリスクであり、同時多発故障が発生した場合、データが完全に消失し、復旧に多大な時間とコストがかかった事例も存在します。

したがって、データ消失という致命的な事態を避けるためには、 NAS が物理的寿命を迎える前に、クラウドサービスへの移行や、機器をリプレイスするなどの抜本的な対策を講じることが、企業にとって不可欠です。

リスク②サイバー攻撃によるセキュリティリスク

NAS などのオンプレミス環境は、セキュリティ管理の煩雑さからサイバー攻撃のリスクを抱えています。外部からのアクセス制御や OS・ソフトウェアのセキュリティパッチ適用を自社で行う必要があり、これはセキュリティ担当者にとって大きな負担となります。特に ランサムウェアのような脅威は、 NAS が持つ脆弱性を突いてファイルデータを暗号化し、社内ファイルすべてを利用不能にする可能性があります

リスク③隠れたコストと柔軟性欠如による運用リスク

NAS の運用には、初期の導入費用だけでなく、保守契約の更新や定期的な機器のリプレイス費用、24時間稼働に伴う電気代、そしてバックアップやトラブルシューティングといった管理業務にかかる人件費など、 「隠れたコスト」が発生しています。さらに、オンプレミス型の NAS は、リモートワークの導入や拠点増加といった企業の働き方の変化に対し、柔軟な対応ができません。外部からのセキュアなアクセスには VPN 環境の構築が必要となり、容量増加のたびに HDD の追加・交換といった時間とコストのかかる作業が発生します。

Google Workspace によるファイル管理の革新

これら NAS の持つリスクを解決できるツールとして、Google Workspace への移行をおすすめします。Google Workspace は、NAS の物理的な故障によるリスクをはじめ、セキュリティ、運用上の全リスクを根本的に解決するクラウドストレージです。

ファイル管理を革新し、複数人でのリアルタイム共同編集で非効率な作業フローを解消。高度な検索機能でファイル内容まで瞬時に検索でき、従業員の探索時間を削減します。直感的な権限設定と詳細な監査ログによる強固なアクセス制御で、堅牢なデータガバナンスを実現します。

NAS から Google Workspaceへの具体的な移行ステップ

NAS から Google Workspace への移行は、単にデータをコピーするだけではありません。「計画」「実行」「定着」の3つのフェーズに分けて、体系的に進める必要があります。ステップ・バイ・ステップで進めることにより、データの欠損や移行後の混乱を防ぐことができます。ここでは、つまずきやすいポイントを明確にしながら、具体的なアクションを解説していきましょう。

ステップ①移行前の準備と計画

移行作業をスムーズかつ安全に進めるためには、初期段階のタスクとその重要性を理解することが不可欠です。このステップを雑に行ってしまうと、後続のステップで大きなトラブルにつながる可能性があります。

移行前の準備フェーズで実施すべき主要なタスクと目的は以下の通りです。

タスク 目的 具体的なアクションと目標
ファイルデータの棚卸しと選定 移行コストと時間を最小限に抑える データ総容量の把握、不要データの明確化。移行前に「データ総量を20〜30%削減する」などの目標を定める。
不要データの削除 移行後の管理負荷を軽減し、セキュリティリスクを低減する 古いファイルや重複データ、個人的なデータを完全に削除する。
アクセス権限の整理・見直し Google Workspace での運用をスムーズにし、セキュリティを強化する 複雑な ACL(アクセス制御リスト)をシンプル化し、部署やプロジェクト単位の共有グループに権限を再定義する。

ステップ②ファイル移行ツールの選定と実行

実際のデータ移動は、移行対象のデータ容量やファイル構造の複雑さに応じて最適なツールを選択することが重要です。

データ移行に使用できる主なツールとその特性は以下の通りです。

ツール種別 ツール名 適しているケース 特徴・注意点
公式ツール(簡易) Google Drive for desktop(パソコン版ドライブ) データ容量が小さい(数TB以下)企業、手動での確認を並行したい場合 NASをPC経由でアップロードするシンプルな手法。大容量だと時間がかかる。
公式ツール(大規模) Google Workspace Migrate 大規模なデータ移行、管理者権限での一括転送が必要な場合、ファイルサーバーからの移行 ファイルサーバーから Google Drive へ直接転送。GUIで進捗確認が可能。利用にはGoogle Cloud (GCP)環境構築が必要で、そのサーバー費用が発生する。専門知識も必要。
外部移行ツール(サードパーティ製) 各種移行ベンダー製品 NAS の ACL(ディレクトリの構成や権限)が複雑、もしくは、移行スケジュールがタイト、他システムからの移行が必要な場合 高度な権限マッピング、高速転送、詳細な検証レポートなど、ニッチなニーズに対応。ツール利用のコストが発生する。

ステップ③移行後の検証と運用定着

データ転送が完了しても、移行作業は終わりではありません。移行後の検証と、従業員が新しい環境にスムーズに慣れるための「定着」プロセスが成功を左右します。

  • データ欠損がないかの検証
    NAS から Google Workspace へのデータ移行では、移行前後のデータ総容量に差異がないかを確認し、ファイル数、フォルダ構造、個々のファイルのバイト単位の整合性を検証することが理想です。具体的なチェック項目としては、ランダムに選択したフォルダの移行元と移行先のファイルプロパティを比較し、最終更新日時(タイムスタンプ)が正しく引き継がれていることを確認します。
  • 共有設定の最終チェック
    ステップ①で整理した新しいアクセス権限のルール(例:「営業部フォルダ」は営業部グループのみ編集可)に基づき、実際に各ユーザーアカウントでアクセスし、設定ミスがないかを確認します。
  • 従業員への操作トレーニングの実施
    最も重要なステップとして、Google Workspace への移行完了後、現場の混乱を防ぐために従業員向けのトレーニングを必ず実施します。トレーニング内容は、ファイルの保存場所とアクセス方法(特に PC 上の Google Drive for desktop の利用方法)、Google ドキュメントなどでの共同編集の基本操作、および外部共有を行う際のセキュリティルールと手順などが挙げられます。

NAS から Google Workspace 移行時の注意すべきポイント

NAS のファイル管理構造と Google Workspace のクラウド構造には根本的な違いがあるため、単純なコピーでは解決できない、注意すべき特有のポイントが存在します。

アクセス権限の移行が正しくできているかを確認

NAS の権限管理は Windows の ACL に基づいており、Google Workspace の共有設定(オーナー、編集者、閲覧者)に 完全にマッピングされないため、権限が不完全になるリスクがあります。特に数百、数千のユーザーと何百ものフォルダが存在する大規模組織では、移行ツールですべての権限設定を完璧に引き継ぐことは困難です。

移行後は、複数の階層にあるフォルダや特殊な権限が設定されたファイルについて、手動での権限チェックと調整が不可欠です。必要に応じて再設定を行いましょう。

データ容量やファイル数の整合性を確認

データ移行後には、移行ツールによる自動転送で除外されるファイルや、タイムスタンプがリセットされる可能性に注意が必要です。ファイル名に使用されている文字コードやファイルパスの長さ制限により、一部のファイルが自動的に除外されることがあります。

また、 最終更新日時(タイムスタンプ)が移行作業を行った日時にリセットされるケースがあり、これは法務上・監査証跡として重要となる場合があるため、移行ツールがタイムスタンプを正しく引き継げるか事前に確認し、必要に応じて手動調整や再移行を検討する必要があります。

NAS からの移行を確実に成功させるには?専門家によるサポートを活用しよう

NAS から Google Workspace への移行は、データ容量や権限構造が複雑な企業にとって、 データ欠損長期間の作業負荷運用混乱を招く高いリスクを伴います。自社内での移行は難易度が高く、業務効率の低下にも繋がりかねません。

これらのリスクを回避し、移行を確実に成功させるためには、 Google Workspace 導入・移行に特化した専門家のサポート活用が最も確実な方法です。現在の NAS の状況を踏まえて専門家に相談することをおすすめします。

Google プレミアパートナーの株式会社TSクラウドでは、「Google Workspace 導入支援基本パック」のオプションとして、データ移行オプションサービスを提供しています。Google Workspace の基本となるドライブ設計や、現在お使いのメールやファイルなどのデータを、安全かつスムーズに Google Workspace へ移行できるようサポートいたします。

NAS から Google Workspace へのスムーズな移行で業務効率を上げよう

本記事では、老朽化した NAS のリスクと Google Workspace への移行へのステップを解説しました。Google Workspace への移行は、場所を選ばないアクセスによる柔軟な働き方の実現や、堅牢なセキュリティ体制によるデータ保護強化といった大きなメリットをもたらします。適切な計画と専門家のサポートを得ることで、リスクを最小限に抑えつつスムーズな移行が可能であり、企業の業務効率を飛躍的に向上させることができるでしょう

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