コラム更新日:2026.04.27

Google スプレッドシートによる在庫管理は、コストを抑えつつ、クラウドの強みを活かした柔軟な運用が可能です。Google スプレッドシートとGoogle フォームの連携や、AI(GeminiやNotebookLM)の活用など、Google Workspaceのツールを使って在庫管理を効率化できます。

今回は、在庫管理にGoogle スプレッドシートを使うメリット、管理表の作成手順、コストを抑えたプランなどを解説します。小売業のGoogle Workspace導入事例も紹介しますので、在庫管理の課題解決にお役立てください。

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執筆・監修:TSクラウド編集部

Google Cloud の「プレミア認定」を保有する、Google Workspace 正規販売代理店です。業界歴 17 年、延べ 3,500 社以上の導入支援実績( 2026 年 2 月時点)に基づき、Google Workspace の最新機能から活用術、DX推進に役立つノウハウを専門的な視点で解説しています。

※情報は記事公開(更新)時のものです。Google Workspace の仕様や価格は変更される場合があるため、最新情報は必ず公式ページでご確認ください。

目次

在庫管理にGoogle スプレッドシートを活用するメリット

「在庫管理を効率化したいけれど、高額な専用システムの導入はハードルが高い」と感じている企業にとって、Google スプレッドシートは強力なツールです。従来の方法では難しかった「複数人の同時編集」や「フリーズや上書き保存忘れによる保存ミス」を、クラウド基盤のGoogle スプレッドシートなら回避できます。パソコン本体にインストールする必要がないのも魅力です。

在庫管理に Google スプレッドシートを活用する主なメリットとして、下記の3つが挙げられます。

複数人での同時編集とリアルタイムな情報共有を実現

Google スプレッドシートの魅力の1つは、クラウド上で複数人が同時にファイルを編集できる点です。たとえば、店舗や倉庫、本部など、異なる場所にいるスタッフが、同じシートをリアルタイムに編集できます。在庫状況の報告や発注などのタイムラグがなくなり、拠点間の迅速な情報共有を実現します。

変更履歴の自動保存で「データ紛失」を防止

クラウド基盤のGoogle スプレッドシートは、入力したデータを自動で保存するため、作業中にパソコンがフリーズしたり、上書き保存を忘れたりしても、「データが消えた」という心配がありません。変更履歴が残るため、何らかのトラブルが発生しても、過去の履歴からデータを復元可能で、データの紛失を回避できます。

倉庫内や出張先でもスマホで在庫状況を確認可能

Google スプレッドシートはパソコンだけでなく、現場のモバイル端末からもアクセスできます。倉庫スタッフ用のスマホなどを用意すれば、パソコンを使えない環境でも、在庫状況を確認可能です。データはクラウド上にあり、遠隔地から24時間いつでもアクセス可能で、海外出張中に在庫状況を知りたいときにも役立ちます。

スマホやタブレット利用を想定した「現場向けライセンス」については、記事の後半で解説します。

在庫管理表の作成5ステップ

Google スプレッドシートで在庫管理表を作成する手順を、5つのステップで解説します。

①管理の第一歩:土台となる「商品情報の登録リスト」を準備

まずは、管理したい商品のマスタデータ(基本情報)を準備します。商品コード、商品名、カテゴリ、仕入先など、変動しない基本情報を一覧化したリストを作成し、在庫管理の土台を整えます。

②情報の整理:品番や品名などの基本項目を整え、台帳を完成

次に、日々の在庫変動を記録する台帳となるシートを作成します。列の見出しに「入庫数」「出庫数」「現在の在庫数」「適正在庫数」などを設定し、①で準備した登録リストと紐づけて、管理しやすいフォーマットを作ります。

③手作業の削減:計算式で入出庫数から在庫数を自動計算

「現在の在庫数」を手動で計算するのはミスの元です。Google スプレッドシートの関数を利用して、「繰越在庫+入庫数-出庫数=現在の在庫数」となるような、自動で算出される計算式を設定します。手入力の手間と計算ミスを削減することで、担当者はデータの確認に集中できるようになります。

④見落としの防止:「条件付き書式」で在庫減少を視覚化

在庫が不足する前に気づけるように、在庫減少を「見ただけでわかる」仕組みを作ります。「条件付き書式」機能を使って、「現在の在庫数が適正在庫数を下回った場合、セルの背景色を赤くする」といった設定をしておけば、発注のタイミングを視覚で把握できます。

⑤安全性の確保:適切なアクセス権限で運用を安定化

複数人で同じシートを管理する場合は、重要な計算式やマスタデータが誤って編集・削除されないよう、特定のセルやシートを「保護」します。加えて、データを保管している共有ドライブ に応じたファイルアクセス権限を設定して、誤操作や関係者以外のデータ書き換えを防ぎ、セキュリティと安全な運用を実現します。

スマホ・タブレットの運用を最適化する方法

倉庫や店舗などでは、パソコンではなくスマホやタブレットを利用することも多いでしょう。ここでは、現場の業務負荷軽減と、運用コストを削減する方法を紹介します。

Google フォームで現場負荷を軽減

現場スタッフが、スマホから細かいGoogle スプレッドシートのセルに入力するのは大変です。そこで、「Google フォーム 」で入出庫や棚卸し用の入力フォームを作成し、回答結果が自動でGoogle スプレッドシートに反映される仕組みの構築をおすすめします。この方法なら、現場スタッフが入力しやすいだけでなく、Google スプレッドシートに情報が集約されるので、データ取りまとめの時短につながります。

現場従業員向けプランの併用でコスト削減

Google Workspaceのプランには、ノンデスクワーカー(現場従業員)向けの「Google Workspace Frontline」があります。現場利用に特化しているプランのため、一部の機能が制限されますが、それに伴いライセンス料は低く抑えられています。デスクワークがないスタッフには、高機能なプランではなくFrontlineを割り当てることで、コストを抑えながら円滑な情報共有を実現できます。

Google Workspace Frontlineについては、下記の記事で詳しく解説しています。

※Google Workspace Frontlineライセンスは、単独での利用はできません。また、ご利用にはGoogleによる審査が必要です。

安定して運用するためのポイントと注意点

万能に見えるGoogle スプレッドシートですが、データ量が増えると使いづらくなることがあります。以下は、長く安定して使い続けるためのコツです。

データの肥大化を防ぎ「動作の軽さ」を維持する

Google スプレッドシートは、1ファイルあたりのデータ量や関数が増えすぎると、動作が重くなります。特に、数年分の入出庫履歴を1つのシートに溜め込んでいるような場合は、開くのに時間がかかり、処理の遅れにもつながります。

対策として、年度ごとにファイルを分ける、アーカイブ用の別シートを用意して古いデータを移動させるなど、運用ルールを工夫しましょう。また、「データの入っていない空白の行・列を削除する」「条件付き書式は特定の列だけに絞る」「集計にピボットテーブルを活用する」なども、動作を軽くする効果が期待できます。データを「マスターデータ(全工程)」と「現場用(例:当月分のみ)」に分散して、「IMPORTRANGE関数」で、特定の範囲だけを参照するようにすることも有効です。

「シートの保護」機能で誤操作や上書きミスを防止

複数人が同じシートを編集する環境で怖いのは、「誤って他の人が入力した情報を上書きする」「計算式を消してしまう」などの、人為的ミスです。これを防ぐために、計算式が入力されている列や、商品マスターのシート全体に対して「範囲の保護」を設定しましょう。保護されたセルは、管理者以外が編集しようとすると警告が出たり、編集自体を拒否したりすることができます。

また、特定のユーザー(例:入力担当者と部門責任者)だけにファイル編集を許可して、そのほかの社員は閲覧のみにするなど、不用意な編集を回避する権限設定も有効です。

Googleのツールで管理をさらに高度化・自動化

Google Workspaceに含まれているAIやノーコードツールを組み合わせることで、 在庫管理はさらに進化します。具体的には以下のようなツールです。

Gemini|AI が複雑な関数やGASの記述を代行

Googleの生成AIである「Gemini」を活用すれば、専門的な知識がなくても高度な自動化を実現できます。たとえば、Geminiに「在庫が10以下になったら管理者にメールを送る Google Apps Script(GAS)を書いて」と依頼するだけで、プログラムコードを生成してくれます。複雑な関数の作成もAIのサポートを得られるので、自社の運用に合わせた管理表の作成が容易です。

NotebookLM|蓄積データから在庫変動の傾向をAIが分析

Googleのノートブック型AI「NotebookLM」を活用すれば、蓄積された在庫管理データから、人間では気づきにくいアイデアを得られることがあります。たとえば、過去の入出庫実績をソース資料としてアップロードし、「顧客トレンドを分析して、販促メッセージを作成して」などと質問すれば、 AIがデータを分析して適切な回答を提示してくれます。

加えて、「業務マニュアル」「議事録」「顧客対応の記録」などをソース資料としてアップロードすれば、経験者の勘に頼らない、データに基づいた発注計画を立てやすくなります(※人の判断よりもAIのほうが正しいということではありません)。Google スプレッドシート単体では難しいことも、AIと併用することで、単なる在庫管理表ではなく戦略的なツールとして使用することも可能です。

AppSheet|ノーコードで自社専用アプリを作成

現場が使いやすいスマホアプリをノーコードで開発できるのが「AppSheet 」です。AIのGeminiに相談しながら、AppSheetで進捗・管理アプリを自作し、現場から直感的に入力できる仕組みを実現できます。バーコードスキャン機能や写真添付機能を備えた在庫管理アプリを構築すれば、シートを直接スマホで操作するよりも使いやすく、現場の入力ミスを減らす効果が期待できます。AppSheetはGoogle Workspaceの一部プランに含まれているため、追加コストを抑えつつ、自社専用の高度なシステムを持つことができます。

▼実際のアプリ作成方法はこちらの記事で解説しています。

Google Workspaceを活用した在庫管理事例3選

Google Workspaceを活用して、在庫管理の効率化に成功した企業を紹介します。

株式会社グッデイ|多店舗の在庫調査をフォーム連携で効率化

ホームセンターを展開する「株式会社グッデイ」では、全店舗の在庫調査にGoogle Workspaceを活用しています。同社は以前、各店舗からの報告を電話やメールで受けており、集計に膨大な時間がかかっていました。Google フォームとGoogle スプレッドシートの連携で、データが自動集計される仕組みを構築したことで、データの取りまとめ作業を削減。現場の負担を増やすことなく、本部でリアルタイムに在庫状況を把握できるようになっています。

株式会社ヤッホーブルーイング|モバイルからのデータ入力で在庫管理を高速化

クラフトビールメーカーの 「株式会社ヤッホーブルーイング」では、Google Workspaceを活用して、現場のペーパーレス化と情報共有の迅速化を推進しています。製造現場においては、スマホからGoogle スプレッドシートやGoogleフォームにアクセスして、原料の在庫状況や製造記録を直接入力する仕組みを構築。事務所での転記作業が不要になったことで、リアルタイムな在庫把握と業務スピードの向上を実現しました。管理を効率化したことによって、担当部門の総残業時間を、約250時間から「ゼロ」にしています。

株式会社坂ノ途中|適切なライセンスでコストを抑えながら効率化

野菜やコーヒーの卸・販売を行う「株式会社坂ノ途中」は、物流拠点での在庫管理にGoogle Workspace Frontlineを活用しています。現場スタッフが手軽にモバイル端末から情報にアクセス・更新できる環境を整えて、まずは使い慣れたGoogle スプレッドシートをベースに、現場のデジタル化を推進。全員がリアルタイムで最新のファイルやスケジュールにアクセスできる環境を整備して、コストを抑えながら業務効率化を実現しました。

▼Frontlineの利用には、条件があります。まずは、貴社の状況とご要望をお聞かせください。

Google スプレッドシートで無理のない在庫管理体制の構築を

Google スプレッドシートは、単なる表計算にとどまらず、Google フォームやAppSheet 、さらにはAIと連携させることで、管理システムへと変化します。高額なシステムを導入しなくても、拠点の増加や業務の複雑化に合わせてGoogle Workspaceのツールを組み合わせることで、在庫管理の仕組みを柔軟に変えていくことが可能です。

まずはできるところから進めて、現場の声を聞きながら改善を重ね、自社の成長スピードに合わせて管理体制のアップデートを検討してみてはいかがでしょうか。